※写真上=鳥栖が監督交代後の初戦で貴重な勝ち点3を獲得した
写真◎J.LEAGUE PHOTOS

 金明輝監督に指揮官を交代した鳥栖が、4試合ぶりの勝利を挙げて、暫定ながら降格圏を脱した。38分にCKから先制すると、その1分後にはフェルナンド・トーレスが来日2点目決めて追加点。その後、PKなどで追いつかれるが、78分にFKからジョアン・オマリがヘディングを決め、これが決勝点となった。

■2018年10月20日 J1リーグ第30節
 仙台 2-3 鳥栖
 得点者:(仙)野津田岳人、石原直樹 (鳥)高橋義希、フェルナンド・トーレス、ジョアン・オマリ

先発5人を入れ替えて仕切り直し

【動画】鳥栖が3ゴールを奪い、仙台に勝利! F・トーレスがJリーグ2点目「難しいゴールではなかった」

 残り3分の時点からの雷雨による46分間の中断を経ても、鳥栖の集中は途切れなかった。5分間のアディショナルタイムでもボックス内へ送り込まれるボールを跳ね返し続けると、1点差での勝利をつかんだ。

 鳥栖のU-18チームを預かっていた金明輝監督が正式にトップチームの指揮官となったのは、試合の2日前。「短い期間で、鳥栖U-18でやっていたことを落とし込むのは少し難しいと思った」というのは、正直な思いだろう。その状況で、できるかぎりの準備をしてきた。

 布陣はシンプルな4-4-2。出場停止だった選手も含めれば、マッシモ・フィッカデンティ監督が率いていた前節の先発メンバーから5人が代わった。そのうちの一人、F・トーレスは「監督が替わって雰囲気も変わり、プレースタイルも変わった」と言う。抜け出しの速さだけではなく高さもある元スペイン代表と、体が強い金崎夢生の2トップ、さらに相手ウイングバックの裏へ走り込むサイドハーフへのロングボールに、序盤は打開の糸口を託した。

 実際には、それしか手がなかったと言ってもいいかもしれない。仙台に押され、サイドバックも攻撃を自重する最終ラインには、時にはサイドハーフも加わって懸命にこらえる。すると、先制したのは鳥栖なのだから、サッカーは何が起こるか分からない。CKのこぼれ球を思い切り蹴り込んで高橋義希が今季初得点をマークすれば、その1分後にはF・トーレスが8月26日以来の来日2点目。前半のシュート数は3本の鳥栖が、ともに前節は先発を外れた2人の得点でリードを奪った。

 前半のうちに1点を返され、後半開始から15分も経たずに追いつかれた。だが、金明輝監督の選択は当たり続ける。安在和樹は投入から4分後の78分、ゴール右でFKを奪取。このチャンスに自らゴール前へ送ったボールを、ジョアン・オマリが来日後初得点とする。監督交代がカンフル剤になることは確かだが、ここまで“当たる”ことも珍しい。

 新指揮官には確信があったようだ。「ポテンシャルのある選手たちが多いので、それを存分に生かすには一人ひとりのスペースを少し大きく取らせて、個で打開するというところも含めて準備をしました」と金明輝監督は語っている。その狙いを意気に感じたように、金崎はまさにボールに食らいつき、体を張って攻めの起点になろうとした。左MFの小野裕二も果敢に仕掛け、好パスを通した後も足を止めないプレーから、2点目のアシストにつなげている。

 金明輝監督が表情を崩さない理由は他にもある。「この1勝を4回重ねないといけない」。先制点を決めた高橋義も、「引き分けではダメ」と逆転でのJ1残留へ残り全勝を期する。

 簡単なことではない。だが、指揮官は「こういう状況でバトンをもらったが、チームにポテンシャルがあることも、良い選手がいることも知っている。選手の力を引き出せれば残留できるという自信があった」と話す。後はないが、やることは明確。その象徴のような、新体制での白星発進だった。

取材◎杉山孝


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