日本
23人のメンバーが選ばれ、いよいよロシア・ワールドカップに臨む西野ジャパン(写真◎Getty Images)
リアルに徹してベースは堅守速攻か
本大会開幕2カ月前の監督交代――。新たに指揮を託された西野監督の下で、日本はどんな戦いを挑むことになるのか。就任会見の席上で新監督は攻撃的なサッカーを「理想」としたが、それはあくまで「理想」にすぎないだろう。トレーニング期間が実質大会前の3週間の合宿だけという現実を考慮すれば、監督自身が好む「攻撃」を仕込む時間はない。そこは割り切って、ある程度、守備に軸足を置くのではないか。堅く守って、少ないチャンスをものにする。2010年の南アフリカ大会で日本が見せた堅守速攻スタイルを基盤とする戦い方が、現実的な選択肢として浮かび上がってくる。
実際、西野監督はアトランタ五輪監督時代に強豪ひしめくグループで現実的な戦いに徹し、勝ち点を積み上げた実績がある(2勝1敗)。現実には2勝しながら、グループステージを突破できないという極めて希なケースとなったが、勝ち点をいかに得るかを突き詰めた上で戦い方を選択した。
5月18日に発表されたメンバーはほぼ、ハリルホジッチ時代にプレーしていた選手となったが、それも当然といえば当然。「高いパフォーマンスの選手、実績、経験値のある選手、最高の状態になる選手…想像を働かせながら見ていった選考」。指揮官が語るとおり、これまでの積み上げや経験を重視した決断と言える。その中でも前任者との違いをあえて探せば、ボールを奪った後の選択を見据えている点か。速攻だけではなく、状況を見てつなぐことも考慮した選考であることを、指揮官は発表の場で示唆した。
ポーランド
レバンドフスキは、この大会では何点取るか。エースの出来次第でポーランド躍進の可能性も(写真◎Getty Images)
大エースを擁する東欧の古豪
過去2大会は予選で姿を消したが、74年と82年に3位につけた実績を持つ東欧の雄は、今夏のロシアでダークホースとなり得る可能性を秘めている。世界有数のゴールゲッター、ロベルト・レバンドフスキを前線に擁するのだから当然だ。
予選突破は最終節まで持ち越されることにはなったものの、結果的にはグループ2位のデンマークに5ポイント差をつけてロシア行きを決めた。本大会の組み合わせ抽選でトップシードに名を連ねることになり、1位通過が有力なグループに入るクジ運にも恵まれた。
13年から指揮を執るナバウカ監督は、攻撃的に機能する4-4-1-1の陣形でチームをピッチに送り出すことが多い。チームの強みが前線の顔ぶれにあることも事実。決定力の高いレバンドフスキが、技巧派のピオトル・ジエリンスキ、個人能力の高いカミル・グロシツキといった顔ぶれのチャンスメークに呼応するのだから魅力的だ。
一部にはバイエルンのエースへの依存度が高く、非常時に対する備えができていないとする意見もある。しかし、だからといってワンマンチームとみなすのは短絡的だろう。ウカシュ・ファビアンスキ、ボイチェフ・シュチェスニーというレベルの高いGKをそろえ、バトルを苦にしないカミル・グリク、攻守に頼れるウカシュ・ピシュチェクらが後方に控えるポーランドは、格上が相手でも接戦に持ち込むことできるだろう。グループリーグ突破はノルマであり、2年前のEUROに続く国際大会ベスト8進出は現実的な目標だと言える。
文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍
セネガル
リバプールで大活躍しているマネを筆頭に、スピードやパワーに優れた実力者が各ポジションにそろう(写真◎Getty Images)
攻守にタレントがそろうダークホース
昨年のアフリカネーションズ杯では準々決勝でカメルーンに敗れ、フラストレーションの溜まる結果となったが、そこからシセ監督は、攻守にとてもバランスが取れたチームを築いた。W杯最終予選では縦に速い効率的な戦いで、ブルキナファソ、南アフリカ、カーボベルデと同居したグループを首位で抜け、本大会への切符を手に入れた。
最大のストロングポイントは、カリドゥ・クリバリとカラ・エムボジのCBコンビだ。特にナポリでプレーするクリバリは、CBとして世界トップ10に入るであろうスペシャリスト。空中戦にめっぽう強く、攻撃ではセットプレー時の得点源ともなる。大会で注目すべき選手のひとりだ。一方で、サイドバックの顔ぶれは固まっておらず、シセ監督は最適解を探し続けている。本大会を3カ月後に控えた今年3月のテストマッチ2試合では、3−5−2システムも試した。
だが、本番では後方によりコンパクトな土台を取り戻すことのできる、 4−3−3に戻すだろう。なぜなら、この攻撃的なシステムでこそ、世界屈指の“攻撃トリオ”サディオ・マネ、ケイタ・バルデ、ディアフラ・サコの力を最大限に生かすことができるからだ。3人は互いのプレーを理解し合い、いい連係プレーを生み出している。優れた技術と猛烈なスピードを武器とする彼らのカウンターアタックは、対戦相手にとって脅威となるだろう。また、ときにはポジションを変えながら多くの攻撃オプションを持ち出し、相手にとって対策の取りにくいチームにしている。まぎれもなく、ダークホースのひとつに数えられる好チームだ。
文◎パスカル・フェレ 翻訳◎木村かや子
コロンビア
ハメスやファルカオといった世界有数のアタッカーは健在。前回大会のベスト8超えを狙う(写真◎Getty Images)
主力とサブの格差が成績を左右する
今回の南米予選は上位2枠を除いて大混戦となり、コロンビアも大いに苦しむことになった。その理由は主力のパフォーマンスが低調だったことにある。攻撃の軸であるラダメル・ファルカオやハメス・ロドリゲスがケガに見舞われて離脱を余儀なくされると、攻撃は沈黙した。また、守護神ダビド・オスピナもアーセナルで出場機会に恵まれず、コンディション調整に苦しんでいたため、守備もバランスを欠くケースが散見されている。
さらに浮き彫りになったのが、得点源の層の薄さだ。ファルカオの他にもヨーロッパでプレーするFWはいるが、予選の得点ランキング上位15位までに入ったのは、欠場しがちのハメス1人だけだった。前回大会以降、指揮官は59人もの選手を呼び寄せ、人材の発掘に注力してきた。しかし、23歳のジェリー・ミナと21歳のダビンソン・サンチェスというCBを見いだした一方で、肝心な攻撃陣にはファルカオの代わりも、ハメスに次ぐ存在も見つけられなかった。
本大会を見据えれば、そのことは予選時と同様にチームのアキレス腱になりかねない。つまりは主力次第ということ。その前提が崩れると、たちまちチーム力の大幅な低下を招く恐れがある。それを補完する手立ては、いまのところない。もちろん、タレントが大会を通して万全なら前回大会の再現もあるわけだが、今回は総力戦を強いられるであろうグループステージの影響が大きそうだ。勢いよりも疲弊の度合いが問題になるかもしれない。CIES(スポーツ国際研究センター)が4月末に発表した優勝候補ランキングを見るとコロンビアは12位。さて…。
文◎横井伸幸