浦和は大槻毅暫定監督就任以降、3連勝。前半は主導権を握り、ペースをつかむ。23分に菊池大介のクロスを興梠慎三が頭で合わせて先制ゴールをマーク。29分にも橋岡大樹のセンタリングを興梠がヘディングで流し込み、追加点を挙げた。後半は運動量が低下し、清水に押し込まれる時間が多くなったものの、粘りの守備で1失点にしのぎ、逃げ切った。清水は攻撃のアイディアに乏しく、1点を奪うのが精いっぱい。3戦勝ちなしで12位に後退した。
■2018年4月15日 J1リーグ第8節
浦和 2-1 清水
得点者:(浦)興梠慎三2
(清)金子翔太
浦和生え抜きの18歳「サポーターの声は心に響く」
黒髪のオールバックでびしっと決めるボスの指示は粋だった。
「ワイルドにいけ!」
浦和ユース時代から大槻暫定監督に指導されてきたルーキーの橋岡大樹にとっては聞き慣れた言葉だ。「縦に積極的に仕掛けて行ったり、守備から攻撃に切り替えるときに、恐れずに前に出ていく。それがワイルドってことだと思います」
この日も指揮官の期待にしっかり応えた。
1点リードの29分、野生味あふれるドリブル突破から追加点をお膳立て。鋭い右クロスを興梠慎三の頭にぴたりと合わせ、「狙いどおりでした」と胸を張った。
全体練習が終わった後も自主的にクロスの練習を積んでおり、指揮官も「トレーニングの成果が出た」と評価していた。
右アウトサイドで上下動を繰り返しているが本職はセンターバック。
「与えられたポジションで全力を尽くす」
4日前の神戸戦でもフル出場しており、この日は終了間際に足がつっていた。それでも、ピッチで何度も足を伸ばし、白旗を上げることはない。ベンチに向かって、交代の必要がないことをアピールすると、再び走り始めた。
「僕は足がつっても走れるので」
ユース時代からそうだった。大槻暫定監督も教え子のタフネスぶりは計算済み。少し異変が起きても、交代カードをそのポジションで使わなかった。アディショナルタイムに柏木陽介をベンチに下げると、ボランチの青木拓矢を投入して、逃げ切りに成功した。
浦和育ちの18歳。熱狂的なファン・サポーターが詰めかける埼玉スタジアムでプレーする意味を深く理解している。
「最後まであきらめない姿勢を見せないといけない。サポーターの声は心に響く」
肉体の限界に挑む姿は、声援を送り続けていたサポーターの心にも響いたはず。
「ここで満足するわけにはいかない」
新人の言葉は頼もしい。浦和の反攻は、まだ始まったばかりだ。
文◎杉園昌之 写真◎Getty Images