ルヴァンカップ決勝を翌日に控えた11月3日、試合会場の埼玉スタジアムで川崎フロンターレとセレッソ大阪が前日練習・前日会見を行なった。
クラブ史上初となるタイトルを懸けて争う両チームの主将は、ユニフォーム姿で記者会見に臨み、胸を高ぶらせていた。川崎Fの小林悠は点取り屋としての仕事を果たすことを誓った。
「最後の仕上げに専念したい。僕の役割はゴールを決めること。タイトルを取りたいという気持ちの強いほうが勝つ」
C大阪の柿谷曜一朗もエースストライカーのプライドをにじませた。
「点を取ることが一番の仕事。ゴールに尽きる。自分が結果を出して、チームを助ける。先頭に立って、引っ張っていく」
決勝のキーマンとなる男たちは、積年の思いとともに大舞台に上がる。川崎F一筋15年目の中村憲剛にとっては、Jリーグ杯決勝は今回が『3度目の正直』になる。07年、09年は唇をかんで呆然と表彰式を眺めるしかなかった。平常心を強調しながらも、一戦に懸ける思いは強い。
「今回は(その過去を)払拭するチャンス。頼もしいチームメイトもいるし、自分を信じて戦う。いい試合より勝つ試合をしたい」
あと一歩でタイトルを逃してきたのはC大阪も同じだ。94年度、01年度、03年度は天皇杯準優勝。00年は1stステージ2位。下部組織出身で12歳から桜色のシャツに身を包む日本代表FWの杉本健勇は、幼いながらに涙の歴史を見て育ってきた。あすはプロキャリアで初めて決勝の舞台に立つ。
「いつか自分がトップチームに上がり、タイトルを取るのが目標だった。こういうチャンスは何回もあるわけではない」
ファイナル進出の立役者となった若手たちも決戦への思いを馳せた。川崎Fの下部組織で育った三好康児は、準決勝の第2戦で2ゴールを奪い、チームの勝利に大きく貢献。大舞台に向けても意気込んでいた。
「攻守両面で走り、チームに勢いをもたらしたい。相手にも付け入る隙はある」
C大阪は大卒2年目の木本恭生が、ルヴァン杯でブレイクした。準決勝の第2戦ではアディショナルタイムに劇的なゴールをマークし、歴史の扉を開いた。
「ルヴァン杯は自分自身を成長させてくれた大会。メディアにも取り上げられ、注目されるようになった。ただ、点を取ったのは偶然。僕は守備の選手なので、あすは無失点に抑えることに貢献したい」
念願の初戴冠はどちらの手にわたるのか――。
(取材◎杉園昌之)