上写真=2021年のインターハイ決勝で先制PKを決める佐野。U-20キルギス戦と同じ右下スミに決めた(写真◎石倉利英)
文◎石倉利英
試合後に泣いた2人の背番号10
3月6日に行なわれたU-20キルギスとのグループステージ第2戦。U-20日本はチャンスを作りながらも先制点が遠かったが、73分にMF松木玖生(FC東京)がエリア内で倒されてPKを獲得する。キッカーは佐野。DAZNのライブ配信を見ていた筆者は、ゆっくりと足踏みするように助走を始めたのを見て「右下のコースに蹴るだろうな」と予想した。
米子北高(鳥取)3年時の2021年インターハイ(全国高校総体)決勝で前半に先制PKを決めたときと、よく似た助走だったからだ。予想は当たり、右下を狙ったキックは見事に成功。日本は2点を追加し、3-0で勝ってグループステージ2連勝とした。
日本は同3日にU-20中国と対戦したグループステージ第1戦でも、立ち上がりの6分に先制され、なかなか得点できずに苦しんでいた。だが交代出場した佐野が66分、左サイドからのふわりと浮かせたセンタリングで、FW熊田直紀(FC東京)の同点ヘッドをアシスト。70分にも左から鋭いセンタリングを送り、熊田の逆転ゴールにつなげて2-1の勝利に貢献した。今年5月にインドネシアで開催されるU-20ワールドカップへの出場権を懸けたアジアの戦いで、2試合続けて価値ある働きを見せている。
遡って、2021年のインターハイ決勝。佐野のPKで10分(35分ハーフ)に先制した米子北は、優勝候補筆頭の青森山田高(青森)の反撃をしのぎ、初優勝に迫った。だが後半終了間際の69分に追いつかれると、10分ハーフの延長後半終了直前、通算90+1分にも失点。直後に試合終了のホイッスルが鳴る劇的な幕切れで、高校選手権も含めて同校初となる日本一を逃した。
背番号10の佐野はピッチに崩れ落ちて涙を流したが、青森山田の10番もピッチに突っ伏して泣いた。今回の日本をキャプテンとして引っ張っている松木だ。当時もキャプテンを務めており、自身初の高校日本一を勝ち取って喜びの涙を流していた。
2年前の夏に日本一を争った2人が、いまチームメイトとして世界の舞台を目指している。PKを決めた佐野の会心のガッツポーズと、駆け寄って祝福する松木の笑顔を見て、あのとき2人の涙を目の前で見た筆者は、思わず画面に向かって拍手を送っていた。
もっとも、まだ戦いは始まったばかり。9日にはU-20サウジアラビアとの第3戦が行なわれ、その後も4位以内に与えられるU-20ワールドカップ出場権に向けて、厳しい戦いが続くだろう(開催国枠で出場するインドネシアが4位以内に入った場合は、5位決定戦で代表を決定)。佐野や松木、そのほかの若き日本代表の戦いを、これからもDAZNでチェックしていきたい。