スコットランドで実績を積み上げ、自身が夢と語っていた2026/2027シーズンからプレミアリーグに参戦することに前田大然。加入する昇格組のイプスウィッチとはどんなチームか、そして前田はどんな役割を求められるのか。イギリス在住の記者が期待を込めて綴る。

上写真=大きな期待を持って今夏、前田大然はイプスウィッチに迎えられた(写真◎Getty Images)

ライバルサポーターも認める存在

「プレミアリーグ」という前田大然の夢は、2025—26シーズンのイプスウィッチで叶うことになった。7月25日に発表された、セルティックからの移籍。28歳の日本代表FW/MFは、4年半を過ごしたスコットランドのグラスゴーを離れ、3年契約でイングランド東部に“ホーム”を移すことになった。

 同時に、筆者の友人の願いも叶った。ベテランレポーターのジュリアン・テイラーは、同じグラスゴーのクラブでも、レンジャーズをサポートする素顔を持つスコットランド人。プレミアや、時にはスコティッシュ・プレミアシップの試合会場で一緒になる度に、「とにかく嫌な選手。早くいなくなってくれ!」と言っていたものだ。セルティックの宿敵サポーターによる「厄介者」扱いは、最大級の「褒め言葉」だと言っていい。

「バーベキューをすると寄ってくるあの邪魔者みたいだ」という、彼の前田評は忘れられない。肉を焼き始めた途端に飛んで来て、何度追い払おうとしてもいなくならず、しまいには肉の上に止まってみせる、うざったいあれである。全く美しい例えではないのだが、チームの前線から、守備陣へのプレスにゴールにと、文字通り「ノンストップ」で、迅速かつ執拗に対戦相手に迫り続ける前田だからこそ、イプスウィッチでのフィットが予想される。

 移籍先でチームを率いるのは、今年6月後半に新監督となったガリー・オニール。今夏のW杯でも「効き目」を見せた日本人新戦力を、「チームの重要な一員になってくれる」と評しているが、イプウィッチは、キーラン・マッケナ前体制下での昨季中に、ストライカー獲得に動いていても不思議ではなかった。

結果的にはリーグ2位で自動昇格を決めるのだが、1トップ役のジョージ・ハーストとイバン・アソンは、合わせてリーグ戦16得点。チャンピオンシップ(2部)でも、心強いとは言えない得点源だったのだ。

 オニールは、まだ43歳で監督としては若い部類に属するが、他の若手監督に多く見られる、ポゼッションを大前提とするタイプではない。戦術的にも、システム的にも、柔軟性が1つの持ち味。プレミアでの監督歴となっている、ボーンマスとウォルバーハンプトンの両クラブでも、「残留」という現実目標に沿った戦い方で結果を残してきた。

 獲得された前田はというと、セルティックでの出場212試合で79得点という得点力の他に、1トップ、セカンドトップ、左右のウイングと、どのポジションでも機能する点が、持ち味の一つだ。21億円台の移籍金が「安い」と言われる理由でもある。オニールは、対戦相手に応じて適所と判断される起用法で、前田を活用することができる。古巣での昨季途中から、出場全33試合で計18点に直接絡んだ、マーティン・オニール体制下(当時は暫定)にも通じる起用法だ。

 プレミアの対戦相手は、その大半が昇格組相手に攻め込んでくるに違いない。つまり、上位戦や強豪との対戦では、トランジションに重点を置き、堅守速攻を良しとするオニール率いるイプスウィッチで、前田がカウンターで裏に抜けるチャンスが十分にあるとも考えられる。また、同格との対戦では、主導権を握りにいく。必須となる前からのハードなプレッシングは、前田の代名詞も同然だ。昨夏のセルティックでは、6年ぶりに帰還した左SBのキーラン・ティアニーが、冗談交じりに「狂っている!」とまで言いながら、感嘆の声を聞かせてくれた。

「どうしたらあんだけ走れるのかと思うだろうけど、マエダには当たり前なんだ。練習でも、そうだから。あんなにスプリントとプレスを繰り返せる選手は見たことがない。ダッシュで戻って守備も助けてくれるから、サイドバックとしては有り難いし、(縦のコンビは)最高。とにかく、あのスプリントは半端ない」


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