ウォートンの力を引き出す鎌田という存在

鎌田はフランクフルト時代からグラスナー監督の信頼が厚い(写真◎
復帰後初の先発フル出場は、引き分け(1—1)に終わった2月19日のECLプレーオフ第1レグ。翌週の第2レグ後、「当初の予定だと、まだ出られないぐらいの時期ではあるので、再発しないようにリスクを考えながらやっていかないと」と明かしつつも、そのホームでのリターンマッチでも90分をこなし、ズリニスキ・モスタルから奪わなければいけなかった勝利(2—0)の実現に貢献している。得点には絡んではいないものの、「チームとしてボールを持てる時は、そこに入っていって欲しいという感じなので」という“ポケット”を見つけては動き、チャンスメイクと自らのシュートで敵を脅かしていた。
当時から「自分たちの目標は優勝」と断言していたチームでは、アダム・ウォートンとのコンビが定番だ。22歳のイングランド代表MFには、今夏の引き抜きターゲットとして、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーからの興味が報じられている。今季末で契約満了となる29歳の鎌田も、年齢が2、3歳若ければ、グラスナーとのセットで噂のあるニューカッスル以外にも、ビッグクラブ入りの噂が絶えなかったことだろう。
鎌田が、強風と横殴りの雨の中でもフル出場を果たした、3月12日の16強AEKラルナカ戦第1レグ後(0—0)、その日も隣にいたウォートンについて尋ねてみた。
「ボールを預ければ前にすごいクサビを入れてくれるし、僕にじゃなくても、違う選手にクサビが入って、そこから自分も関わっていけるところは、彼が他の選手と違う部分を思っていると思う。ボールが出てくるので、彼のタイミングっていうのもあると思いますし、彼がボールを受ける前に、自分自身もより良いポジション取りをするように心掛けています」
そう答えた鎌田の存在も、ウォートン株上昇の裏にはあると思える。
翌週、敵地で延長戦の末に16強を突破したパレスは(2—1)、続く8強での初戦で、4強入りを確実にしたようなものだ。後半にフィオレンティーナが巻き返しかけていたことから、2点差では安心とまではいかなかっただろうが、鎌田が絶好のクロスで演出した3点目が、準決勝へとチームを大きく後押しした。
その準々決勝第1レグ後、「きっと来季はいないと思うと淋しい」と携帯メールを送ってきたのは、パレスのお膝元であるロンドン南東部に住む31年来の友人。翌日に軽くファンサイトをチェックしてみると、他にも同意見の持ち主はいた。
続く4月12日のプレミア第32節ニューカッスル戦(消化31試合目)、パレスは、ホームでは今季初の逆転勝利を記録(2—1)。フィオレンティーナ戦第2レグを4日後に控え、スタンドの「12人目」を含めて勢いとムードを高めた。鎌田は、1点を追う状態だった後半31分から、必要に迫られての登場。2シャドーの一角に投入された4分後には、攻撃を加速させるボックス内へのパスで、CFジャン=フィリップ・マテタの同点ゴールに至るきっかけを作っている。
当人が、「終わりよければ全てよしじゃないですけど、昨季はそれが良かった分、今季もしっかり、最後にいいところに持っていけたらと思います」と言っていたのは、ECL決勝トーナメント進出を決めた直後。チームの今季、そして自身のパレス時代も、栄冠を伴うフィナーレへと向かっているようだ。
取材・文◎山中忍
