海を渡って2年目のシーズンを戦うシント=トロイデンの鈴木優磨が、ベルギーで圧倒的な存在感を放っている。33節を終えて17ゴールを記録。チームの残留に大きく貢献し、その才を満天下に示した。サッカーマガジンWEBではリーグ最終節(4月18日、アンデルレヒト戦)を前に単独インタビューを実施。ヨーロッパでベースを築いたストライカーは、これからが「本当の戦い」と語ったーー。

ヨーロッパでの土台をつくれました

画像: 前線で圧倒的な存在感を示した鈴木優磨(写真◎Getty Images)

前線で圧倒的な存在感を示した鈴木優磨(写真◎Getty Images)

――ゴールのバリエーションを見ると、クロスボールに合わせるパターンが多かったと思います。

鈴木 クロスボールに対し、相手の前に入り、シュートを打つ形が多かったですね。直接体をぶつけて勝負して勝つのは難しい。ニアに行くふりをして、止まってみたり、クロスの入り方は考えながらやっています。体が覚え始めたのかな。ペナルティーエリア内での動きは、洗練されてきました。

――駆け引きがうまくなった?

鈴木 ベルギーリーグで僕が生きていくためには、駆け引きが必要でした。日本ではパワー勝負で勝てていましたが、ベルギーリーグではそうはいかない。僕より体の大きなセンターバックがごろごろいますから。ただ、駆け引きの動きをちゃんと見てくれるチームメイトがいなければ、僕の工夫も生きません。だからこそ、信頼し合える仲間の存在が重要なんです。もちろん、パスをもらったときに点を取ることは大事です。結果を出し続けることで、信頼は深まり、次もその次もパスがきます。今季は、そこがうまく噛み合っています。

――駆け引きを覚えるために取り組んだことはありますか。

鈴木 試合の中で『これはいける、これはいけない』と試行錯誤していくしかなかったです。今季はベルギーリーグの試合をよくチェックしました。対戦相手にどのような特徴を持った選手いるのかを確認することは、やっぱり大切ですね。

――昨季はベルギーリーグのほかの試合は見ていなかった?

鈴木 見なかったですね。点を取りたいという気持ちばかりが先走ってしまい、肝心なことを忘れていたのかもしれません。

――対戦相手ごとにマーカーのことを分析して、試合に臨んでいたのですね。

鈴木 ミーティングでのスカウティング映像もそうですし、自分でもチェックしていました。試合前には頭でイメージし、ピッチに入っていますね。

――では、ベルギーリーグ2年目でつかんだもの何でしょうか。

鈴木 ヨーロッパでの土台をつくれました。この土台の上に、一つひとつ積み重ねていきたい。ここからヨーロッパでの本当の戦いが始まります。

――いよいよ、来季はステップアップの時期になるのではないですか。

鈴木 シント=トロイデンには冨安健洋選手(現ボローニャ/イタリア)、鎌田大地選手(現フランクフルト/ドイツ)、遠藤航選手(現シュツットガルト/ドイツ)らが築き上げてきたものがあります。このクラブでいいパフォーマンスを見せれば、ステップアップしていけるという流れを途切れさせるわけにはいきません。それがクラブの狙いでもあります。僕が次に進むことで、またシント=トロイデンに来たいという日本人選手が増えるはずです。

――鎌田選手はシント=トロイデン時代にプレーオフを含めて15点を取り、ドイツのフランクフルトに戻りましたが、鈴木選手はそれ以上のインパクトを残しています。

鈴木 大地とは状況が違うので、単純な比較できないです。まず移籍形態が大地はレンタルで、僕は完全移籍でここに来ていますし、年齢も違います。僕の場合、これまでシント=トロイデンから羽ばたいて行った、どの選手ともタイプが違います。冨安はクラブの活躍とA代表に出ていたこと、航くんもA代表での活動実績がたぶん大きく評価されて、ステップアップしたと思います。僕のパターンは新しい形。A代表キャプはゼロなので。チームメイトの助けはありましたが、自分次第で上のステージに行けることを示したいですね。

――話を聞いていると、慎重にキャリアプランは立てている印象です。

鈴木 背伸びはしたくない。僕は誰よりも自分自身を客観視できていると思っています。過大評価もしないし、過小評価もしない。次のステップアップも現実的に試合に出場できる可能性の高いクラブを選ぶと思います。試合に出なければ、選手の価値なんて下がるいっぽう。プロサッカー選手は試合に出てナンボです。個人的な考えですが、試合に出ないで、何かを得られるとは思いませんね。

――ヨーロッパで成し遂げたい最終的な目標を教えてください。

鈴木 ストライカーとしての目標は、5大リーグで二桁ゴールを取ることです。この数字を持っているか、持っていないかでは、将来的なキャリアを考えても、大きく変わってくると思います。日本人のゴール記録などには正直、あまり興味がありせん。自分自身がどこまで点を取るかです。自分は自分。最終的にはチャンピオンズリーグで出場したいと思っています。

Profile◎すずき・ゆうま/1996年4月26日生まれ、千葉県出身。鹿島アントラーズのアカデミーで育ち、2015年にトップチームに昇格。同年9月のG大阪戦でJ1デビュー戦を飾り、初ゴールを決めたストライカー。16年にはJ1優勝に貢献。18年にはACL初制覇を成し遂げ、大会MVPも受賞した。19年夏からベルギー1部のシント=トロイデンVVでプレー。今季は33試合を終了時点で17ゴールを記録している。182㎝、75㎏

取材・構成◎杉園昌之 写真◎Getty Images、シント=トロイデンVV


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