上写真=囲み取材に応じ、パリ五輪本大会に向けて展望を語った大岩剛監督(写真◎川端暁彦)
6月の活動に呼べるなら呼びたいが…
U23アジアカップを戦った選手たちは所属クラブに戻っての活動を再開しており、大岩監督もその視察に追われる日々を送っている。「さすがに疲れてはいると思う」とそれぞれの状況を慮りつつ、U23アジアカップの決勝を終えたあと、0時を回った宿舎で選手たちに「代表選手の宿命」について説いたことも明かした。
「疲労感も宿命。その上で各チームにて求められていることをやらないといけない。自分もそうだし、ようやく時差ボケが抜けたくらい。1カ月も向こうにいれば、簡単じゃない。ただ、それをどう乗り越えていくかだし、これも経験として積み上がっていく」
大岩監督はアジアの戦いでは選手もスタッフも途轍もない重圧を感じていたことをあらためて説明した一方で、心理面で本大会へ向かう心情は「まるで違う」とも明かす。チャレンジャーとして向かう本大会は2カ月後。残された日数は限られている。
「たしかに短い時間ですけど、ものすごい仕事への熱を持ったスタッフたちがいるので、みんなで一緒になってやっていければと思っている」
本大会直前を除くと、代表チームとして集まれるのは6月のアメリカ遠征1回のみ。ここでは「呼べるなら呼びたいと思っている」(大岩監督)オーバーエイジ選手たちや、アジアの戦いには招集できなかったU-23年代の海外組の選手たちも含め、指揮官の考えるベストに近いオーダーが組まれることになりそうだ。
「オーバーエイジの選手たちが来てくれるのであれば、われわれのスタイルがある中で、そのベースを上げるためにやっていきたい」
もっとも、6月は欧州のオフシーズンであり、移籍の季節でもある。「本当にこれは難しい」と指揮官が頭を悩ますように、誰を招集できて、誰を招集できないのかがなかなか確定しない状況だ。例えば、大岩監督はA代表のGK鈴木彩艶について「本人の意思は確認した」としながら、実際に招集できるかについては明言を避けた。
「(欧州は)オフに入るので、7月の本番に呼べることになった選手でも、休みを取らせてあげたりするわけです。(欧州組は)もちろん呼べるならここで呼んで(U23アジアカップ組との)融合を図りたいというのはありますが、そう簡単でもない」
仮にオーバーエイジ選手が6月に呼べなかった場合は、まさに『ぶっつけ本番』となる。
また、移籍の問題もある。オーバーエイジの候補選手を含めてこの夏に移籍の噂がある選手はかなり多く、その話がまとまらないことには交渉も不可能。またU23アジアカップに出たJリーグ組の中にも新たに欧州へ旅立つ可能性のある選手がいる。
大岩監督は「デリケートだし、プライベートな問題でもあるので、迂闊な発言はできない」としつつ、複雑怪奇な五輪選手選考パズルに取り組んでいる真っ最中であるとも明かした。
6月の米国遠征メンバーは5月末日に発表予定。基本的にこの遠征メンバーに、オフを優先させた一部の欧州組を付け足した中から最終登録18人を選出する方針だ。もっとも、これも「移籍」という「われわれにコントロールできない部分」(大岩監督)に振り回される可能性もあり、指揮官の悩める日々はしばらく続くことになりそうだ。
取材◎川端暁彦