上写真=シュート練習を行なう橋岡大樹(写真◎山口高明)
いとこの走り幅跳び代表・優輝は「いい刺激」
5日に始まった合宿は、良い雰囲気の中で進んでいると橋岡は説明した。それは目標に向かって一つになっていると感じるからだという。
「この大会に向ける気持ちというのが本当にみんな強いなと感じました。僕自身もそうですけど、本当に金メダルを取ってやる、取れるという自信が1人ひとりから感じられる。本当にいい雰囲気でできていると思います」
2日目の練習後にはアタック陣に混じってシュート練習にも取り組んだ。チームメイトと真剣に取り組みながらも、枠を外せば、橋岡への声が飛ぶ。ボール回しでは自ら積極的に声を出し、仲間を盛り立てていた。橋岡がチームの雰囲気づくりという点で大きな役割を担っていることがうかがえた。
「(ムードメーカーという)自覚はあんまりないというか、みんなにはそういうふうに言われますけど、素でやっている部分が多いので。そう言ってもらえるのはすごくうれしいですし、ムードメーカーはチームで重要な役割だと思う。ただ、それだけじゃなくて自分の良さを、プレーの面でも試合で出していきたいと思います」
「チームがいい雰囲気じゃないときも、悪く言えば空気が読めないというふうに思われるかもしれないですけど、逆にそういう時こそ、必要なのかなと思いますし、みんながどんよりしている時に、1人でもバカできるじゃないですけど、チームの雰囲気を良くするために行動できると自分では思っているので、そういったところでいい雰囲気づくりができたらいいかなと」
そのパーソナリティーで、橋岡はピッチ内外でチームにポジティブな空気をもたらしている。もちろん、本人が言うようにそれだけではなく、ピッチでしっかり結果を出すことにも注力している。大会のメンバー入りが決まった後、シント=トロイデンが開いた会見では、「選ばれることは一つの目標ではありましたけど、ここがゴールではないので。選ばれてからが本当に重要だと思っています。本大会で活躍するというのが目標なので、そこまでやり遂げたい」と語っていた。それが簡単ではないことも当然ながら知っている。CBと右サイドバックでプレーできる橋岡は、合宿2日目のミニゲームで右サイドバックを務めた。同ポジションにはオーバーエイジでチームに加わった酒井宏樹がいる。
「酒井選手は、皆さんが言うようにものすごい高い壁だと分かっていますけど、自分も自分の良さを、たとえば対人の強さだったり、アグレッシブなところだったり、競り合いの強さが強みだと思うので、そういうところを練習からアピールして、チャンスが来たときにいい結果を残したい。それがチームにとっても自分にとっても大事なことだと思いますし、オリンピックではチーム力が本当に大切だし、(試合に)出ている人、出ていない人が、どれだけ練習でハードワークして、いい準備ができているかだと思う。なので、常に準備したいと思います」
チャンスをつかみ、そのチャンスを生かせるように橋岡が自分自身を磨く理由は、もう一つある。それは、いとこの橋岡優輝の存在だ。先日、陸上の日本選手権で優勝し、走り幅跳びで五輪出場が内定した。ともに本大会で活躍することを誓い合っているという。目指すのはもちろんメダルだ。
男子走り幅跳びの決勝は8月2日で、男子サッカーの決勝は8月7日。メダルのバトンを受け取り、そしてメダルを獲得する形になれば最高だろう。
「日本一になったり、いまは彼(優輝)がものすごくいい結果を残していて、すごく尊敬しています。だた、やっぱり競技は違いますが、優輝が結果を残すと、僕も結果を残さなければいけないという気持ちになります。こうやって世間の皆さんが優輝に注目している部分で、僕ももっと優輝より注目されないといけないという気持ちにさせてくれる。そういった部分で僕はすごく刺激を受けています」
この夏、2人の『橋岡』がメダリストとしてその名を刻むことになるか。橋岡大樹は、そんな未来を実現すべく、チームのため、そして自分のために今、準備を進めている。