上写真=旗手怜央は左サイドバックとして先発し、橋岡大樹に交代するまで60分間プレーした(写真◎JMPA毛受亮介)
あの場面で走れば選択肢を多くできる
今回の活動を見事な形で走り切った。自身の持つポテンシャルの高さをしっかり示したと言っていい。A代表との試合に左サイドバックで先発し、U-24ガーナ代表とのゲームでは78分に途中出場してトップ下を務めた。そしてこの日のジャマイカ戦では再び左サイドバックで先発した。
ただの便利屋ではない。それぞれの持ち場でチームに貢献している。ジャマイカ戦では、攻撃センスと推進力を存分に発揮した。
象徴的なシーンが二つある。まずは26分の場面。左サイドでボールを持ち上がると、相手のマークを外しつつ、トップ下から動き出していた久保建英にスルーパスを通した。久保のシュートはポストに嫌われたが、本来はアタッカーである旗手らしいセンスあふれるパスだった。
次は42分だ。遠藤航のファインゴールを『走る』ことでアシストしている。ボックスの角、左斜め45度あたりで遠藤がボールを持った瞬間、旗手はその背後をランニングし、マークを引き付けた。そのプレーによって日本が誇るボランチは余裕をもってゴールを狙うことができた。
「あの場面で自分が走れば、ボール持った選手の選択肢を一つ多くできる。遠藤選手がゴールを決めてくれたので、自分の考え通りになったプレーだった。その点に関しては、良かったと思います」
「サイドバックをやっていて、ボールを持っていないときの動きというのはすごく重要です。自チームだと登里(享平)選手がそういう動きをしているので、そのプレーを見て、自分の持ち味としていこうと意識しています」
所属する川崎Fでは最近、左サイドバックとしてプレーする機会はないが、その川崎Fで不動の存在として活躍する登里を参考に自らを高めてきたという。ジャマイカ戦では対面する相手の動きをけん制しながら、斜めにボールを入れたり、スペースを突くボールを供給して攻撃をクリエイト。果敢に走って味方に時間と空間を提供することも含めて、登里が得意とするプレーを自分なりにアレンジし、しっかり表現してみせた。
「僕自身、ボールを持っているとき、前の選手を生かさないといけないですし、CBの選手だったりボランチの選手が持ってたら僕を生かしてもらわないといけない。そういった点ではA代表との試合のときに比べると、すごく良くなっているんじゃないかなと思う」
旗手自身も、手ごたえを感じていた。
「どのポジションだろうと結果を出さないといけなかった。その点ではゴールやアシストができなかったので、すごく悔しい部分がある。ただ、自分のやりたい攻撃は時間を重ねるごとにチームメイトに分かってもらえて、良くなったんじゃないかなと思います」
「この前の試合(=ガーナ戦)は中山選手が先発でしたが、どちらかというと守備の選手という感じなので、僕は攻撃で自分を見せないといけなかった。攻撃参加だったりボールを持ったときのパスだったりという部分をすごく意識しました。今日が最後の試合だったので、ピッチで、自分でやりたいことを表現できたことはすごくよかった」
最終選考の場でもあった活動を終え、旗手自身、次があると感じているのかどうか。つまりは、五輪への扉は開いたのか。
「後悔してもしょうがないので。僕が持っている力は出し切ったんじゃないかなと思います」
試合後に取材に応じる旗手の表情には充実感も見て取れた。やるだけのことはやり切った。あとは所属クラブに戻り、吉報を待つーー。