上写真=OAを組み込んで臨んだ初戦で、6-0の勝利を飾ったU-24日本代表(写真◎JMPA増田泰久)
■2021年6月5日 国際親善試合(@ベストS/リモートマッチ),
U-24日本 6-0 U-24ガーナ
得点:(日)堂安律、久保建英、OG、相馬勇紀、上田綺世、三笘薫
ギアを入れる際に示した3人の存在感
この日のゲームは、初めてオーバーエイジの3人、吉田、酒井、遠藤航を加えて臨んだ。GKは谷、ディフェンスラインは左から酒井、吉田、冨安、中山、MFは遠藤航と田中がドイスボランチを組み、2列目は左から堂安、久保、相馬。そして1トップは上田が務めた。
横内昭展監督はOAを先発起用した意図について「急きょA代表とのゲームが入り、もちろんそちらも大事なゲームだったので、総合的に2試合を見て、今日のメンバーになりました。ただOAに関しては、最初から5日の方の準備をしていましたので、なかなかA代表の方に絡ませるのは難しいかなと。航は途中で出ましたが。ですので今日は90分戦ってもらいました」と説明した。
結果、チームは前半からうまく回った。一つには守備面の安定性。水をも漏らさぬディフェンスで、相手の攻撃を高い位置でストップしていった。そして攻撃面でも吉田や遠藤から縦パスがズバズバと入り、酒井は幅を取ると同時に推進力を見せつけた。
結果、日本は6ゴールを集めることになった。堂安、久保、酒井のクロスが誘発したOGと前半に3点を挙げ、相馬、上田、三笘と後半にも3点を記録した。
とくに前半の出来は良く、最終ラインがしっかりプッシュアップして陣形をコンパクトに保つことで高い位置からのプレスを実践。セカンドボールもことごとく回収し、奪回と攻撃を良いリズムで展開した。横内監督も「入りからすごくみんな集中して高い位置からもボールを奪いに行っても後ろで漏れることなく守備ができ、良い攻撃につなげられた」と評価する内容だった。
本大会初戦となるU-24南アフリカ(7月22日)との対戦を想定して組まれたU-24ガーナ戦は、相手に二十歳前後の選手が多く、強度の面で物足りなさが残ったのも事実だが、日本にはOAを組み込んだうえで連係を深めるという意図があり、テストマッチとして非常に重要だった。
「ギアを入れるとき、ディフェンスにしても攻撃にしても、タイミングの良い声かけだったりとか、コミュニケーションを取ったりとかは彼らから発信することが多かったと思います。それに呼応してU-24世代の選手も積極的に動き出していた。声をかけたりする中でコミュニケーションを取ってやってくれていたと思います」
OAの選手が入ったことで、チーム全体が活性化したことを指揮官は大きな効果と認識していた。もちろん、まだまだ連係を深める必要はある。ボランチである田中が要求するタイミングでボールが入らなかったり、コンビを組む遠藤の距離感調整についても最適化を図るには時間を要するだろう。最終ラインからのパス出しのタイミングもさらに磨かなければ、より強度の強い相手と対峙するのは難しい。カウンターから相手に抜け出され、GK谷の好守がなければ、あわやという危ない場面もあった。
それでも、大きな可能性を示したのは間違いない。
「今回の活動ではまだ(全員が)一緒にトレーニングする機会がほとんどない。(連係や個々の特徴については)これからみんなも分かってくると思います」
先月31日に合宿がスタートし、2日は札幌に移動。3日にA代表との試合を戦い、4日は悪天候のために札幌で長時間足止めされて、ほんとど練習ができなかった。そうして迎えたこの日の試合で、しっかり連動していくつものゴールを生んだのは大きな成果。堂安の先制点は上田と久保が絡んだ。久保の2点目は上田との連動からだった。3点目のOGは遠くを見ることのできる田中のサイドチェンジが酒井に通ったのが大きかった。相馬の4点目は吉田の縦パスが効いていた。5点目は中山のクロスを上田が中でフリーになって記録。そして三笘がネットを揺らしたダメ押しとなる6点目は、中央で複数人がワンタッチパスを交換したうえで決まったものだった。
堂安と久保の流動的なポジションチェンジにも見るべきものがあり、A代表との試合を経験したことの効果もあり、U-24世代の選手たちが球際バトルで積極性と強さを発揮せんとした。
もちろん、この試合は文字通りのテストマッチであり、結果そのものにはそれほど意味はない。ただ、OAを組み込んだチームとして、多くのものを確認できたことは、やはり大きい。その意味で、実りある90分になった。
「ゲームに勝つことはできましたけど、その中で色々課題はあると思います。そういう課題を洗い出して、チームとしてどう取り組んでいくか、どう改善していくかというところ。時間はあるようでないので、そういうところの優先順位をつけながら、選手とそれをクリアしていきたいなと思います」
横内監督は、そう言って気を引き締めていた。ここから本番仕様に、どこまでチームを高めていけるか。五輪初戦まであと46日。2カ月も、ない。
取材◎佐藤 景