上写真=空港に向かうバスの中からオンライン取材に応じた吉田麻也(写真◎スクリーンショット)
どれだけ日本のサッカーを押し上げられるか
3日に札幌で実現したA代表との親善試合では出番がなかったものの、吉田にとって実りの多いゲームになった。試合後には外から見て感じたことをチームメイトに伝えたという。
「個別に気になることがいくつかあったので、プレスの掛け方だったり、ボールのはめ方、回し方については、何人かに話はしました。もちろん自分が(試合に)入ってやるのが一番伝えやすいですし、個人的には1試合見ることができて、ピッチの中の選手の特徴を把握することもそうですけど、試合前から試合へのアプローチ、入り方、ドレッシングルームの雰囲気をつかめました。結果的に1試合やることによって得られるものは多かったと個人的には思いました」
吉田は、審判のジャッジに対してアピールするなど、ベンチからも戦っていた。勝負に対するこだわり、強い姿勢はチームを刺激するものだったに違いない。オーバーエイジであり、A代表のキャプテンである吉田に期待されているのも、戦力としてはもちろん、国を背負って戦う意味や覚悟をチームに伝えることだろう。
吉田自身は今回の五輪で3度目の出場になる。OAとしても2012年のロンドン五輪に続き、2度目。五輪という物差しを持つ経験豊富な選手から見て、現在のチームはどう映っているのか。
「ヨーロッパでやっている選手が当時(ロンドン五輪)より圧倒的に多いし、A代表でやっている選手も多いので雰囲気は非常にいいと思います。あとは最後の選考を兼ねているので、緊張感も高いし、頼もしいなと思います。何より良かったのは、昨日の試合を本気でみんなが悔しがっていること。この年代の選手たちが目指すべきところはA代表だと思うので、対面の選手にどれだけできたかとか、自分のポジションの選手がどれだけやれるのか、テレビを見ていても感じると思うんですけど、実際にやってみて現状の自分とA代表の選手がどれくらい離れているのかが分かったと思うんですよ。それから逆算してオリンピックだったり、これからのキャリアに生かせる。それだけでも価値がある試合だったと思います。僕も悔しかったですけど、彼らの悔しがっている姿は、非常にうれしかった」
U-23ではなくU-24ということもあるが、確かにロンドン五輪に比べてA代表に名を連ねる選手が多く、海外でプレーして経験を積んでいるメンバーも多い。経験値はかつてのチームに勝る。A代表との試合で0-3で敗れたが、吉田はポジティブなイメージを抱いていた。
A代表との試合は急きょ、組まれた試合によって、U-24日本代表はハードなスケジュールをこなすことになったが、一方で他では得ることのできない貴重な経験になった。そして翌日、さらに貴重な体験をすることになる。5日に福岡で行なわれるU-24ガーナ代表戦に臨むために空港へと移動したが、雨と強風で飛行機が飛ばず、足止めされることになったのだ。
「(新千歳)空港に行ったんですけど、かなり風と雨が強かったので、飛ぶのかなっていう心配があって。案の定、空港に飛行機が着いてなかったので待とうとなりました。ただ、待つ時間がかなり長くなると予想されていたので、だったら、こっちでできることをやったほうがいいんじゃないかと。それぞれが知恵を出し合って、搭乗を待つロビーのテレビを使って、昨日の試合のフィードバックのミーティングをしたり。トレーニングもしようということで札幌ドームに行きました。残念ながら、すでに野球場に変わっていたので、ブルペンのところで軽くトレーニングして、今また空港に向かっています」
不測の事態も、前向きに。オンライン取材は移動のバスの中で行なわれたが、吉田が発する言葉は一貫してポジティブだった。明日5日のガーナ戦では、出場が予想されているが、「もともと(東京五輪)初戦のアフリカ勢に対するシミュレーションということで組まれていると思いますし、本大会まで4試合しかない中で、かつ選考の競争があって、チームを作り上げていかないといけない。昨日出た反省点を生かせるのはプラスだし、はっきり言って1点目のような失点を大会でやってしまうと、大会自体が終わってしまう可能性がある。そういうところで、うまくゲームに入ったり、相手の勢いに飲まれないようにしないと。もうちょっと精神的にはコントロールできるんじゃないかなっていうのがあるので、明日はそこを意識して入りの部分を大事にしていきたいと思います」と気を引き締めた。
コロナ禍で代表活動がなく、自身の代表チームに対する思いも変化したと語る。「自分の残りのキャリアでできることってなんだろうと考えたときに、どれだけ日本のサッカーを押し上げることができるかじゃないかなと。少しでもそれに貢献できることがあるならば、それにトライしたいという気持ちがコロナ禍で増した」という。OAでの参加を決めたのも、それが一つの理由。日本サッカーの押し上げを目指す吉田は、その思いを、まずはガーナとの試合で示す。