上写真=ゲーム形式の練習では鋭い飛び出しを見せた安部柊斗(写真◎サッカーマガジン)
初日、2日目はトップ下でプレー
「出たい思いはありましたけど、それは思いであって、そこまで現実的ではありませんでした」
安部にとって、東京オリンピックはこれまで意識はしても、はっきりと出場への意欲を口にできる大会ではなかった。しかし、今季、FC東京に加入した大卒ルーキーは早々に定位置を確保すると、なくてはならない存在へと成長していく。タイトな日程の中でもJ1では27試合に出場。ACLでも出番を得た。2020年は文字通り、飛躍の1年になったと言える。
J1で存在感を示し、そして五輪代表の候補合宿に招集された今なら、以前よりもはっきりと意欲を示せるのかもしれない。
「今回初めて選ばれることになって、より近づいた感じです」
ただし、以前に比べて近づいただけ。メンバー入りのハードルは高い。22日、23日に行なわれたゲーム形式の練習では4-2-3-1のトップ下に入り、プレーした。
「チーム(FC東京)でもボランチでなくインサイドハーフをやる機会が多くて、たまにトップ下もやることもありました。なので見える景色は普段とほとんど一緒だったので、そこまで困らずにできたと思いますし、そこでも自分の特長を出せた部分がありました。ポジションが本職ポジションがではないところでも、できる選手が上にいく選手だし、良い選手だと思う。与えられたポジションの役割をしっかりまっとうすることを意識してやっています」
求められる役割すべてを完璧に理解する段階にはまでには時間が足りないが、自身の持ち味を5日間の合宿中に出し切ることだけははっきりしている。
とくに今季の終盤は飛び出しやシュートを意識して取り組んでいた。リーグ戦の得点は2ゴールのみだが、ACLでは絶対に負けが許されなかった上海申花とのグループステージ第4節で決勝ゴールを決めている。豊富な運動量をベースに前への意識を強めた結果が生んだ得点だった。その前方向への動きを指揮官も評価しているという。練習後の指揮官との会話の内容を取材陣に問われて、答えた。
「トップ下だと2列目からの飛び出しをやってほしいと(森保監督に)言われていて、そこからの自分の走力をすごい評価してもらいました。飛び出しだったり、もう一回絡むことだったり、そういうプレーを自分はしていかないといけないと思っています」
これまで世代別代表に入ったことがなく、国際経験という点ではまだまだ足りない。それを踏まえた上で、安部は決意を口にした。
「今は国内組だけですが、それでもレベルの高い選手がたくさんいます。競争に勝っていかないといけないし、川崎(フロンターレ)組であったり、海外でやっている選手の方が経験を積んでいると思うので、その選手たちに追いつくためにも、このキャンプでしっかり自分をアピールしないといけない」
「(今回の合宿で)初めて日の丸を背負ってプレーするので、国際大会とかではないですけど、ちゃんと責任と自覚を持ってプレーしないといけないと思います」
もちろん、五輪代表がゴールではない。その向こうに見据えているものがある。「通過点。世代別代表ですし、その先にはA代表に食い込んでいきたいと思っています。その通過点として、まずは五輪に出るというのが自分の中にあります」。
安部にとっては、この合宿が未来を切りひらく大きな一歩となる。