サッカー日本代表が勝利で北中米ワールドカップへと旅立つ。5月31日の国際親善試合で日本はアイスランドを1-0で下したが、約2年ぶりに帰ってきたのが冨安健洋。改めてその地力の高さを示して本番へと向かう。

上写真=冨安健洋は2年ぶりの日本代表でのプレーでもブランクを感じさせなかった(写真◎毛受亮介)

■2026年5月31日(日) 国際親善試合(観衆62,212人/@MUFG)
日本 1-0 アイスランド
得点:(日)小川航基

「ワールドカップで決められたら」

 冨安健洋が帰ってきた。

 2024年6月11日、北中米ワールドカップ2次予選のシリア戦以来の日本代表のピッチだ。スタートから3バックの右に入り、2年ぶりとは思えない確かな安定感でブランクへの不安を一掃した。

 森保一監督は、同じく負傷明けの遠藤航とともに「彼らが持っている最高のプレーからすれば、まだまだ上げていけるところもあると感じた今日の試合でした」と言外に大きな期待を込めたが、本人には力がみなぎっていた。

「別にフルでやろうと思えばやれたと思います。でもやっぱり60分以降、少し落ちるというか、そういう感覚は僕の中では…どうですか。落ちてました?」

 鈴なりになったメディアに逆質問して笑わせたが、83分に退き、「まだやれるという感覚で、交代って感じですね」と涼しい顔。

「別に長くプレーすることに関しては、特に。ずっとしっかり練習もできていて、そこの積み上げはあると思っていたので、特にそういう感じではないです」

 アイスランドが攻めてくる回数は少なく、板倉滉と伊藤洋輝と組んだ3バックが危険にさらされるのは数えるほどだった。その分、ビルドアップへの反省をこぼす。

「連係のところにもなるかもしれないですけど、特に攻撃のところで、もうちょっと(堂安)律とかタケ(久保建英)をシンプルに使ったり、彼らはクオリティーがある選手たちなので、もっと気持ちよくプレーさせることができればよかったなと思います」

 こちらが主体的にボールを持つ時間が長いからこそ、攻撃に関わるべきだったという課題である。ただ、明確なチャンスにつながるアクションも少なくとも二つはあった。

 45+3分、左サイドに回った久保が伊東純也とのパス交換からポケットへ滑り込ませ、抜け出した中村敬斗が折り返す。そこにいたのが冨安だ。右足のインサイドボレーでていねいに当てたシュートはしかし、GKの手に収まった。

「当てるだけというか、とりあえず枠に入れたい気持ちはあってああいう当て方はしたんですけど、振って枠を外すよりはって思いました。決められたらよかったんですけど、ワールドカップで決められたらいいなと思います」

 右シャドーの久保が逆サイドまで大胆にポジションを移し、右ウイングバックの堂安が高い位置に入り、さらにファーサイドから右センターバックの冨安が潜り込んでくる。空間を介した連係の好例だ。

 もう一つは63分。今度は右サイドからだ。

 日本が押し込んだが跳ね返され、攻守が入れ替わりそうな一瞬、右タッチライン際で冨安が相手の縦パスを力強く絡め取る。すぐさま縦の久保に預けた。

 久保は内側の瀬古歩夢を使い、瀬古は中央の小川航基へ低く鋭いくさびを打ち込んだ。小川は右に持ち出して切れ味のあるシュートを放っている。

 これは右に切れていくのだが、冨安の出足の鋭さと、彼の言う「シンプルにタケを使う」ことによるスピード感を殺さずに攻め切った一連の展開に、日本の強みを見せた。

 この日、日本のポゼッション率は52.4パーセントと半分以上。オランダ、チュニジア、スウェーデンと戦うワールドカップのグループステージで、ここまでボールを持てるとは限らない。それでも、「持ったときのシミュレーション」はできた。冨安にとっては、攻撃に関与することだけではなく、表裏一体となる守備についても。

「ワールドカップ本戦でもいろいろな相手がいますし、強豪国と対戦するというか、初戦のオランダにフォーカスされがちですけど、それだけじゃなくて、自分たちがボールを持って進める展開になる試合も間違いなくあると思います。その中で後ろ3人とボランチが前の選手たちにアドバンテージを与えられるようなボールの動かし方ができれば、得点機会になるシチュエーションが増えると思います。
 あとはその中で僕らはリスクマネジメントをしないといけないですから。今日も何回か失ってカウンターを受けるシーンがあって、そこでしっかりと先にリスクマネジメントをしておいてつぶすことができれば、相手陣内でずっと試合を進められる。そこは僕も含めて後ろの選手たちがやるべきことだと思います」

 まさに63分のシーンが「リスクマネジメントからの攻撃」に当たるが、「個人的には2年ぶりにこのチームに来たので、チームのやり方も変わっているところもありますし、僕がアジャストしていかないといけない」として、細部の積み上げに余念はない。

 それでも、技術もスピードもインテリジェンスも相変わらず高い地力があることを、この83分で十分に示しただろう。「あとは上げていくだけ」という本人の実感にもうなすける。

「間違いなくチーム力は大会随一のものがあると思う。トップトップのリーグ、クラブでプレーしている選手たちが多いので、それを見ればチャンスはあると思いますし、間違いなくそこを目指してますし。他の国の選手からしても、注目されているというか、舐められていないし」

 そこ、とはもちろん優勝のこと。そのために自分に課すのは、シンプルなこと。

「日本代表としてプレーする責任がありますし、ただの思い出づくりに来ているわけでもない。選手としてピッチに立っている以上、その責任はありますし、ピッチに立てない選手もいる中で選んでもらっているので、あくまでサッカー選手としてやるべきことをやる、自分のできる限りのパフォーマンスを出すということにフォーカスするべきだと思います。それはこれからも変わりません」

 冨安健洋が、日本代表に帰ってきた。


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