上写真=遠藤航は歴史的勝利のブラジル戦は不在だったが、「あまり気にしていない」(写真◎青山知雄)
ワールドカップ優勝の最低限必要な条件
10月の歴史的なブラジル戦初勝利の歓喜の輪の中に、キャプテンはいなかった。遠藤航は負傷のために不参加となっていた。
「リハビリ中だったので最初の15分と残りの15分ぐらいを見た感じだったんですけど。最初1-0で負けてて、外に行って帰って来たら3-2になっていて。歴史的勝利ですね。チーム力を示せた素晴らしい試合になったと思います」
そこにいないことで逆に存在感が高まる「不在の在」。それでも、遠藤なしでカナリア軍団に逆転で勝った。「いなくても勝った」ということ自体がもう、いまの日本代表の格が上がったことを示している。
「自分が不在で大きく崩れるようなチーム作りはそもそもしていない。自分がキャプテンになって自然体というか、あまり自分が責任を感じすぎずじゃないですけど、キャプテンとしてできることは意外と多くないという話もしましたけど。自分がいままで示したものを受け継いでというか、キャプテンマークを巻いた選手が示してくれているので、個人的にはうれしく思います」
自分がいなくても組織が確かな力を発揮すること。そのための準備を人知れずしていることは、優れたリーダーの条件だろう。それに、危機感に苛まれるほどやわじゃない。
「そこはあまり気にしていない。チームとして力がつけばいいと思っているので、そこの自分のスタンスはあまり変わっていない。与えられた役割でチームに貢献すればいいと思っているので、誰が出ても同じ戦いができるチームというのが、強くなっていくと思う。ワールドカップの連戦の中で全員の力が必要になることを考えても、中盤を含めて2チーム分ぐらい作れる戦力がいるのは、ワールドカップ優勝に向けて最低限必要な条件になると思うので」
10月シリーズでボランチは、佐野海舟が存在感を高め、鎌田大地がクラブでのプレー同様にタクトを振るい、田中碧、藤田譲瑠チマも持ち味を出そうと必死だった。南野拓実がキャプテンマークを巻き、仲間を鼓舞する姿勢がチームをもり立てた。このチームに関わるすべての人が、「ワールドカップ優勝」から逆算して考え、行動してきた。遠藤も、チームを離れている間も考え続け、戻ってきた今回も行動で示していく。
「落ち着いて代表を見るというか、家族とゆっくり過ごしたり、それなりに充実した時間を過ごせました。逆に言うと、また新たなモチベーションが生まれたというか、代表でプレーしたいとか、代表選手としてプレーできるのは素晴らしいことだと思い返せたタイミングでもあったので、いい機会にはなりました」
リフレッシュも万全だ。今回の活動では、ブラジルに勝った直後だからこそなおさら勝利が大事になる、というのは全員に共通する思いだ。
「日本の皆さんの期待はブラジルに勝ったことで上がったと思うので、今回は自分たちにプレッシャーをかけた形になるので、ここでしっかり勝ちきることがさらに日本のファンの期待を高めさせることになると思う」
だから、逆説的になるが、ここでは結果はもちろんのこと、もっと大事にしたいことがある。
「ここからの親善試合でまたいい相手とできる可能性があると思うので、そこでも結果を残していくことがワールドカップに向けて大事になると思う。でも、個人的には過程を大事にするべきだと思っています。どういう戦い方を自分たちが意図を持ってやっているか、そこのプロセスを大事にしていくことが必要だと思う。ブラジル戦でもいいところ、悪いところがあったと思うので、ガーナ戦で生かしていきたいし、ブラジルに勝ったからガーナに勝てるという保証はない。チームとしてワールドカップへ準備するプロセスを大事にして、さらに結果もついていけばいいのかなと思います」
「遠藤がいなくても大丈夫」な日本代表から、「遠藤がいるからもっとすごい」日本代表へ。そうやって、世界一への歩みを踏みしめていく。
