サッカー日本代表は14日、ブラジル代表と対戦し、0−2から3ゴールを叩き込んで逆転勝利を飾った。後半、ギアを入れてアグレッシブに戦った末の逆転劇。堂安律は経験と自信を口にし、『本番』に向けて課題にも言及した。

上写真=攻守両面でアグレッシブなプレーを見せた堂安律。中村敬斗のチーム2点目につながる起点にもなった(写真◎高野徹)

前半2失点は余計だったと課題にも言及

 ブラジル戦前日、堂安は次のように試合を展望していた。

「殴り合いに行くべきなのか、殴り合って勝てるレベルに今の日本がいるのか。それともやっぱり引いてやっていくのかは、チームとしてもちろん話し合いを各選手していますし、ここではもちろん言わないんですけど、明日見て感じてくれたら。
 忘れちゃいけないのは、自分たちのスタイルってそもそもなんなのかと。カタール(W杯)で成功したこと、引き込んで仕留めるっていうのは、それも自分たちのスタイルですし、ここ最近積み上げてきたもの、ボールを回すのも自分たちのスタイルでもありますし。一つが自分たちのスタイルではないので。勝てばいいし、勝ち方は正直、僕はどうでもいいので、勝つために選択をしたいなと思います」

 前半、日本はブラジルのブラジルたる所以を味わうことになった。5−4−1でミドルブロックを築いたが、そのブロックを巧みなパス交換で突破され、ブロックを無効化する空間を使った浮き球パスからネットを揺らされた。

 パラグアイ戦でシャドーを務めた堂安は、この日、右ウイングバックに入った。粘り強い守備から攻撃に転じ、果敢に仕掛ける堂安らしいプレーを見せていたが、前半のうちにブラジルにリードを許すことになった。

 だが、2点差をつけられても、その相手がW杯最多優勝国のブラジルであっても諦めなかった。裏付ける経験があるからだ。

「やっぱり(遠藤)航くんがいないとか、(板倉)滉くんがいない、(三笘)薫くんがいない中で、前半からちょっとネガティブな、何かを変えようとする選手が少ないなみたいなことは正直、感じていました。ハーフタイムは、どうしてもネガティブになりがちなので、チーム的にも若いですし、まだまだ経験の浅い選手が多い中で、ネガティブにならずポジティブにトライしようと、(南野)拓実くんと僕が先頭になって声をかけていました。そこで非常に有意義な時間を過ごして、後半に臨めたと思います」
 
 ハーフタイムを挟んで後半のピッチに登場したチームは、見違えていた。ギアを攻撃に入れ、守備の局面でも積極的に前からボールを奪いにいく。カタール・ワールドカップのドイツ戦やスペイン戦を思い起こさせた。

 そして、ハイプレスから奪った南野のゴールを皮切りに19分間で3ゴール。歴史に残る大逆転を成功させてみせた。

「(カタールW杯の経験は)間違いなくあると思います。冗談でね、僕たちが『戦術カタール』って言ってるんですけど。これ、冗談ですよ。あんまりタイトルで書いてくれると困るんですけど(笑)。戦術カタールがハマった」

 W杯優勝経験国に対して公式戦で逆転した経験は、チームに生きている。その立役者となった堂安は言った。

「(前半で)0−2は正直、(W杯)本大会だときついと思います、正直なところ。0−1まではオッケーだと思うし、2失点目がやっぱ余計だったなって。後で映像を見返さなくちゃいけないんですけど、僕のマークなのか、(渡辺)剛くんのマークなのか、そこはちょっと今から見たいですけど。1点なら大丈夫っていう感覚はW杯でスペイン戦、ドイツ戦から学んでいますし、2失点はどうやろうなとちょっと思いました。けど結果的に逆転できたんで。ただ、その失点は少なければ少ない方がいいので、そこは反省点。失点してから2失点目取られないでおこうっていうのは試合前から話していたので、課題ではあります」

 経験が逆転を呼んだ。それは日本の歴史であり、積み上げだ。そして、そのことに胡座(あぐら)をかかず、先に点を取られてしまう課題を克服しなければならないと堂安は気を引き締めた。目指す場所は、さらなる高みにある。

「戦術的に、今日も少しちょっと引いたミドルブロックでやったので、体力は温存できていたから、後半逆転できたと思います。今までの(森保監督の)第2次はやっぱり主体的に、という中で前半からガンプレ(ガンガンプレス)したんで、後半ちょっとエネルギー不足になって、相手がそれに慣れてきた。どちらかというと今日は後半からエネルギーを入れた感じだったんで、前半0-0で、例えば今日のように3点とって3-0で勝つのが理想かもしれないですけど。試合運びで言ったら2失点はなかったなと。1点を取れなくても0-0じゃないといけないなっていうのはあります」

 この試合は、日本の現在地を測る意味合いもあったが、過去13戦未勝利のブラジルを逆転で破り、歴史を塗り替えた。むろん、これで終わりではない。

「(この勝利には)2つの思いがあって。1つは日本サッカーにとって、ブラジルっていう国を倒したことは間違いなく大きな1歩になったと思います。歴史を作った日ではあるので、素晴らしい日になったと思う。そしてもう1つは本大会で勝たないと、ということ。勝利の後に釘をさすようですけど、本大会でやってこそ本物ですし、彼らが本大会のテンションかって言ったらそこはわからないですけど、自分たちで話し合う必要はあるし、手放しで喜ぶ時間はないと思うので。ただ一方で、素晴らしい日になったのは間違いないと思います」

 W杯という舞台で歴史を創ることを目指して、堂安もチームも、気を引き締めて前進を続けていく。


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