上写真=左シャドーとして先発し、攻守にピッチで躍動した南野拓実(写真◎兼村竜介)
選手としてはやれる感覚があった
2点を先行される苦しい展開だった。しかし、南野には「やれる感覚」があったという。
「0−2になってハーフタイムに、(前半は)何回かチャンスあったから、選手としてはやれる感覚が、1点取り返せば、盛り返せる感覚があったんで。後半はとりあえず、前からプレス行けるように同数でハメてっていう風にやって、うまく相手のミスをつけてよかったなと思います」
劣勢から盛り返す重要なゴールを刻んだのが、南野だった。相手の右センターバック、ファブリシオ・ブルーノに対して上田綺世がプレッシャーをかけ、苦し紛れに出した横パスをカット。そのまま冷静にゴールを射抜いた。
「まだこのゲームは死んでないよ、と監督ももちろん声かけてましたし、僕もそう思っていた。1点取ったら絶対まだ勝負に持って行ける。だからそれをまずは選手全員がそう思っていたと思いますけど、共通認識として後半ピッチに立てるように、そういう部分は声をかけてました」
パラグアイ戦に続いてキャプテンマークを巻いてピッチに立っていた。リードを奪われて迎えたハーフタイムも、下を向かず、積極的に選手間で意見交換した。選手全員がベクトルを前に向けて臨んだ後半、日本はカタール・ワールドカップのドイツ戦やスペイン戦を彷彿とさせるギア全開の戦いぶりを見せる。
果たして前から積極果敢にボールを取りに行くと、南野がチームを勇気づける1点を奪い、ブラジルを慌てさせた。10分後に中村敬斗が続き、そのさらに10分後にも上田がネットを揺らし、瞬く間に逆転に成功した。
「もちろんリードされている中で押し戻す、試合をひっくり返すことができたのは、選手のクオリティーとアグレッシブなプレーをできる選手がそろっているからこそだと思います。やっぱりみんな仕留める力とか、綺世も(パラグアイ戦から)連続でゴール決めてくれて、そういう選手がいるし、そういう力は上がってきているのかなと思います。この結果は一つの自信になるんじゃないかな。課題はもちろんあるので、あれですけど」
堂安律や町野修斗が明かしていたが、試合前の円陣で南野キャプテンは「親善試合ではなく、歴史を変える試合にしよう」と檄を飛ばしたという。
「ただの親善試合だけど、僕らにとっては親善試合じゃない、と。今まで1回も勝っていなかったし、ここ最近の僕らの成績的に、ここで勝てたら自信につながると思ったので。だから歴史を変えるために戦おうと言いました」
まさに、有言実行。過去13戦して2分け11敗と、一度も勝っていなかった相手からの歴史的な勝利。
南野が望んだ通りの結果をつかみ、チームが自信を深めたのは間違いない。
取材◎佐藤景
