10月14日に「王国」ブラジルを味の素スタジアムに迎えたテストマッチ。過去、2分け11敗という相手に初勝利を狙った一戦で、前半に2点を許しながら後半に3点を奪い返す興奮の逆転勝利をもぎ取ってみせた。その裏には、例えば久保建英の「同じ目線」があった。

上写真=前回対戦と違って日本の応援がほとんど。「今日ブラジル応援した人は次から日本を応援してくれれば」(写真◎高野 徹)

■2025年10月14日 国際親善試合(観衆44,920人/@東京スタ)
日本 3-2 ブラジル
得点:(日)南野拓実、中村敬斗、上田綺世
   (ブ)パウロ・エンリケ、ガブリエル・マルティネッリ

守備で日本の機動力を

 ブラジル相手の歴史的初勝利。しかも、2点差をひっくり返す鮮やかさ。久保建英は喜んで、でも喜びすぎていない。

「これで一つ、みんなが盛り上がってくれたらうれしいと思います。ただ、親善試合なので、喜ぶところは喜んで、何も変わってはいないと思うので、これで慢心しないように。勝ったという事実は喜んで、次にまた11月はいいチームと試合があると思うので、盛り上がってやっていきたいなと思います」

 森保一監督の言う「相手と同じ目線」を持つ男だ。相手が「王国」ブラジルであっても、自分と相手を同じ舞台に立たせ、極めてフラットに比較する。

 26分に最初に失点したシーンは、

「あんまりやらせていなくて、試合の内容とは違った形の失点というか、1個すっとやられた感じでした。完璧に崩された感じもなかったですし、その分、悔やまれる感じではありましたけど」

 日本がチャンスを多く作って押し込んだあとの失点だったから、勢いをへし折られた格好だ。

 32分に2点目を失ったところから、個で勝負することで逆襲の糸口をつかんだのは、

「あんぐらい誰かがやらないと、本当に格下みたいな感じになってしまうのでね。クロスをマイナスに送ったほうがよかったとかいろいろありましたけど、そこでこっちも1発あるぞっていうの見せておかないと、完全に流れをひっくり返せない展開になってもおかしくなかった。そこは積極的に、特に2失点してからは無理にでも仕掛けていこうかなと思いました」

 そして、0-2で迎えた後半に日本が盛り返すことができた理由は、

「ブラジルのビルドアップ能力がそこまでなかったっていうのが7割ぐらいで、あとはやっぱり相手(日本)が前半あれだけ引いてきて、後半でいきなり出てくるってなったら、どの国でも多少は面食らうんじゃないですかね」

 といった具合だ。

 久保自身は負傷上がりの左足首の状態を考慮して、45分、長くて60分という時間限定でのプレーが予定されていた。

「(ハーフタイムに)なんかその雰囲気をちょっと感じたんで。いけるいけるって言ったんです(笑)」

 見事に自己アピールに成功し、後半もピッチに立って、54分までプレーした。同点、そして逆転の瞬間にはベンチに下がっていたが、「今日は別によかったですね、これで」と納得。「これ(足のケガ)がなかったら90分出たと思うんです、すごいプレーも良かったと思いますし。で、結果、交代で入った伊東選手がいいクロスを上げて逆転して」と、自分のプレーをつないでくれた仲間に感謝した。

 そして、課題がよりクリアに見通せることこそ、勝利の大きなメリットだ。しかも、ブラジルを相手に2点差を逆転して歴史的初勝利を挙げたのだから、その透明度も高い。

 どんなことを課題としてとらえているのか。一つは、相手を見てチームとして戦い方を変容させていくしたたかさ。

「最初はミドルブロックを作って引いていこうと話していて、結果だけ見たら、ブラジルがセンターバックのボールを保持する能力があまり高いわけではなかったので、前から(守備を)やった方がよかったなと思いますけど、それも経験なのかなと」

 プランを優先しつつも、相手の弱点を見破ったなら、そこを突いていくために意思統一を求めることもできた、ということだ。後半には「もう、15分は(前から奪いに)行こうよという話はみんなでしてまとまったので、うまくいってよかった」わけだから、前半のうちにピッチの中で戦い方をシフトできればなおよかった。

 その上で、ゲームの流れをより優位に持っていく作業も課題の一つ。

「いけるかなって思っていたところで、なんにもないところから出鼻をくじかれて(失点して)しまって、ちょっともったいなかったなっていうのはみんな思ってたとは思います。2失点目でこれはちょっとやばいかなってみんなもたぶん思い始めたっていう、嫌な20分間はありました。そこのところでもう少し突き詰められれば、もう1個上の段階に行くんじゃないかなと思います」

 失点しても、それを重ねないためのチームの持ち直し方を、最初の失点のあとに浸透させることの必要性だ。それが日本を次のステージに運んでくれるという実感を得た。

 こうして、最高の勝利から最高の反省が導かれた。だが、あくまで目標はワールドカップ優勝。

「完成しているチームなんて世界を見渡してもどこにあるのか、という話です。そういった意味では日々進化していけることはプラスにとらえたい」

「ただ、特に守備のところでは、攻撃でいい選手がたくさんいて、守備もいい選手はたくさんいますけど、みんなで守るというところに対しても日本の機動力を見せたい。逆転してからはみんなすごく粘りを見せていたし、最初から引くときはあれぐらいやれるかなと。引きすぎずにボールホルダーのところでフリーにさせると、ラフなクロスを上げられたりワンツーもみんなうまいので、ボールホルダーには最低ついていくとか、そういう縛りみたいなものがあってもいいかなと思います」

 9月はメキシコとアメリカからゴールを奪えなかったが、10月はパラグアイから2点を奪って引き分けて、ブラジルからは3点を奪って逆転勝利。一方で、アメリカ、パラグアイ、ブラジルと2失点ゲームが3試合続いている。

 今度は守備の課題に目を向けながら、11月シリーズへと向かっていく。


This article is a sponsored article by
''.