日本代表のアメリカ遠征で、9月6日(現地時間)に行われたメキシコ戦。フル出場した上田綺世が攻守に効果的なプレーを続けた。屈強なメキシコDF陣に負けず、ポジション取りのセンスで相手のパスコースを分断した。
上写真=上田綺世は最前線で攻守に印象的なプレーを続けた(写真◎Getty Images)
■2025年9月6日 国際親善試合(観衆45,278人/@オークランド)
メキシコ 0-0 日本
「相手のゴール前で脅威になる」
そこに確かな「軸」があった。ポストプレーで相手の守備網をえぐれば、巧みな立ち位置で相手のビルドアップの芽を摘む。上田綺世が見せた攻守の貢献がメキシコを機能不全にさせた。
相手ゴールに背を向けて背中から厳しく当たられてもびくともしない。つなげてきてくれたボールを収め、展開する。
その最も象徴的なシーンが53分だ。左寄りで鎌田大地が顔を上げると、上田は右寄りのスペースでボールを引き出し、優しく久保建英に落とした。右の堂安律へ預けた久保はそのまま走ってポケットで受けてクロス、上田はニアに突っ込み、その上を越えてファーで南野拓実がダイレクトボレーで狙ったが、枠を外れてしまった。
ただ、メキシコにとって危険なエリアでの鮮やかな連動を生んだのが上田のポストプレーだったことに、異論はないだろう。
「収めるところの成功率もそうだし、体幹で体をぶつけ合ったりしても、そこの技術や強度に関してはやっぱり成長を感じます」
オランダのフェイエノールトで最前線に立って削られる毎日だ。その経験が地力を養う。
「(日本には)技術のある選手もいっぱいいるし、クオリティのある戦術も組んでもらっているので、そこでパワーでも負けない存在として、最低限、今日みたいなボールを保持できる機会を作れれば、技術ある選手ももっと生きてくる。それをゴール前でもできたらもっといいですけど」
守備でも特徴的なシーンがある。27分、メキシコのセンターバック、ヨハン・バスケスに対して上田が寄せていき、相手の中盤のキーマン、エドソン・アルバレスへのコースを制限した。空いたコースに誘う形になり、そこに出たパスを板倉滉がインターセプトして一気にひっくり返した。
そんな守備の連係について、総じて好感触を口にする。
「よかったんじゃないですか。共通意識ですよね。そもそも相手がそこ(中央)を使ってビルドアップして、というよりも、よりローリスクでフォワードに入れるチームでしたから、そんなにそれ(アルバレスのパスコースを制限)が機能したかは正直、分からないから評価できないです。でも、チームに要求されたことはできたんじゃないかなとは思います」
この日はシャドーの久保建英と南野拓実が相手のセンターバックを押さえつつ、上田が少し下がって中央エリアににらみを効かせた。両サイドにボールが出れば右は堂安律、左は三笘薫が前に出てプレッシャーを掛けた。その連係によって、メキシコに機能的なパスをつながせなかった。
「僕はただそこの仕事だった、というだけで、みんなですね。タケ(久保建英)、拓実くんがプレッシャーをかけてるから、律が、薫くんがしっかり出ていけているから、後ろが整理できてるから、と全部つながってのそれなので。別に僕が消していたからというわけではないですよ。それを、みんながそれぞれちゃんとこなすことによって、全部が意味付けできるということ。みんながやることをやったからです」
だからこそ、ノーゴールだった事実は悔やまれる。上田自身はオランダリーグでは3試合で4ゴールと好調だったが、フル出場したこの日は最後までネットを揺らすことはできなかった。
「シュート数も1本とかだったので、もうちょっと相手のゴール前で脅威になる、そういうプレーは増やしていきたい」
