上写真=アメリカ遠征、初日のトレーニングに臨む藤田譲瑠チマ(写真◎サッカーマガジン)
機に臨み変に応ずるという持ち味
6月のアジア最終予選、アウェーの9節オーストラリア戦で、藤田はボランチとして先発した。最終予選ではその試合が初出場。自身の力をピッチで示す機会をようやく得たが、本来の力を出し切れたとは言い難い。その要因は2ボランチでコンビを組んだ佐野海舟との連係がまだまだ深まっておらず、互いの役割が整理されていなかった点にあると思われる。
例えば、試合中に何度も縦パスを刺そうと試みていた藤田がアンカー気味にプレーし、佐野がその走力とスペースに出ていく能力を生かして受け手となった方がよりスムーズに力を発揮できたのではないか。ピッチ上において6番と8番の役割をある程度、はっきりさせた方が2人の持ち味が出しやすかったかもしれない。
オーストラリア戦に続く10節のインドネシア戦はまさにその構成で、遠藤航が6番、佐野海が8番のように振る舞ってチームの攻撃が活性化した。もちろん、相手が違うのでそのまま当てはまるわけではないが、藤田の能力を考えれば、佐野海と組むケースにおいては6番の方が自らの特長を出しやすいのではないか。本人に聞いた。
「そこは全くどっちかに徹するというのはないと思いますし、チャンスがあれば(自分も)飛び出すべきだと思います。オーストラリア戦はちょっと飛び出す回数がいつもと比べたら少なかったんで、反省点ではあるんですけど。そこの臨機応変さとかは必要かなと思います」
藤田は機に臨み、変に応じてボックス付近へ進入していくプレーも得意とする。本人は役割を固定するのではなく、あくまで状況に応じて選択することが肝要だと話した。
今回の遠征は6月シリーズに続き、守田英正、田中碧がケガのために不在だ。最終予選の主軸を担ってきたボランチ2人がいないことは、藤田にとってアピールのチャンスと言える。
「間違いないと思います。まだ安定したポジションでは全くないんで、自分のプレーを思う存分見せられたら」
この夏、ベルギーのシント=トロイデンVVからドイツのザンクトパウリにステップアップを果たした。開幕2試合は先発フル出場。中盤の仕切り役として期待通りのプレーを見せている。「中心としてやる自覚は持っていますし、チームが勝つために自分の仕事を出来ていると思う」と本人もこれまでのプレーに手応えを得ている様子。所属クラブの良い流れを、今度は代表にも持ち込みたい。
「オーストラリア戦に関しては、積み上げたものはあるとは言いつつ、やっぱり初めての選手も多くて、自分は初めてじゃなかったですけど、五輪から来た選手だったり、というのも多かったので難しい部分もありました。でも今回は逆にコアメンバーに数人が飛び込んで試合するみたいな感じになると思うので、そこらへんはしっかりと(やりたい)。ここで求められているサッカーをやりつつ、自分の色を出せるいい機会ではあると思います」
誰と組むにしても「バランスを取れるのが自分の良さ」と藤田は言い切る。そして「オーストラリア戦ほど相手も引いてくることはないと思うし、スペースは空いてくると思うんで、(縦パスを)積極的に出せたらいい」とも。
今度こそ、ピッチを藤田色に染められるかどうか。縦パスを刺し、日本の強みであるサイドへ展開し、チームを前進させるプレーが期待される。
取材◎佐藤景(現地)
