上写真=シャドーとボランチとして83分までプレーした鎌田大地(写真◎Getty Images)
悲観する内容ではない
前半から日本は苦しい戦いを強いられた。5−4−1で構えるサウジアラビアを攻めあぐね、なかなかゴールを奪えない。守備ではほとんど危ないシーンはなかった一方で、攻撃でも決定機の数は限られた。
2シャドーの一角で先発し、後半途中からボランチでもプレーした鎌田大地が振り返る。
「引き分けに終わっちゃいましたけど、内容的には全然、悲観する内容ではなかったと思うし、あれだけボールも保持できて、相手にチャンスを与えることもなく、しっかり無視点で終われたっていうのは、もちろん勝ちたかったですけど、そんなに本当に悲観するような内容じゃないかなっていうふうに思います」
確かに。試合の主導権は日本が握り続けていた。無失点に終わった点はポジティブだ。だが、無得点に終わった点はネガティブにもなる。試合展開は、がっちり引かれて攻めきれなかったカタール・ワールドカップのコスタリカ戦を思い起こさせた。ノーゴールに終わったのも、あの試合以来。第2次森保体制では初めてのことだった。
「あれだけだから引かれる相手に対して、前半はうまくチャンス作れていましたけど、自分たちがチャンスを作ったシーンで、相手も修正をしてきて、あれだけこう引かれた相手に対して、もう少し自分たちは明確なビジョンというか、チームとしてやるべきことっていうのをやっぱり作らないとダメだなっていう風に思いました」
コスタリカ戦はミスから1失点して敗れた。その意味では今回は無失点。全く同じというわけではないが、相手の個の質という問題もある。フォーカスすべきは攻めきれなかった点だろう。
鎌田自身は前半からボランチの位置まで下がったり、スペースに動いてボール引き出し、攻め筋を探った。ボールを収めてボランチから田中碧が飛び出すプレーを導いたり、後半は浮き球パスやスルーパスで相手ゴールをこじ開けんとしていた。
83分に南野拓実と代わってベンチに下がるまで奮闘したが、結局、決定的な仕事をできずに役目を終えることになった。
「もうちょっと上の国とやると、ここまで引かれることは基本的にはないと思うんですけど、今日はもっとシンプルにインスイングでクロスを上げて、そこに入り込んだりだとか。自分たちがどうした方がいいのか、そこまで共通意識というか、それがなかったので、外に10番(のポジションの選手)が開くのはいいですけど、逆に同サイドでやりきれちゃって、クロスに入りきれなかったりだとか、そういうのもあった。もっとシンプルに怖いことをやり続けても良かったかなっていうふうには思います」
鎌田の指摘通り、W杯本番で格上と対戦するときにはあり得ない展開かもしれない。だが、グループ内にはFIFAランキングで見たときに日本よりも格下に当たるチームと対戦するケースはある。もちろん組分け次第だが、北中米W杯のグループステージでは各組の3位のうち成績上位8のチームがベスト32に進むレギュレーションだ。相手が勝ち点1を狙ってくるようなシチュエーションは起こり得る。あの日のコスタリカや今回のサウジアラビアのようなチームと対戦するかもしれない。
苦しんだことを認めた上で、鎌田は解決策にも言及した。
「連係は何も問題はないと思うんですけど、あれぐらい引かれて中を閉められると、サイドの選手が仕掛けて最後のクロスへの入ったりだとか、そういう部分になってくると思う。あまり中で崩すというよりは。今日は外、外になっちゃってて、なかなか難しい試合だった。
もっと人数かけるべきだったと思うし、そんなにボールポゼッションにこだわらず、最後の怖いところに入っていっても良かったかなと」
そしてクロスの種類についても具体的に口にしている。
「タイミングが合えば、身長やヘディングの強さというのは、インスイング(のボール)とかで(クロスを)入れる場合にはいらないと思う。プレースタイルというよりも、結局ヨーロッパの上のクラブを見てもああいう風に守られて、チップボールで背後に抜けて平行パスして点を取るだとか、そういうシーンが多いと思うので、それは自分たちも共通意識としてあればいいとは思います」
日本は無敗で、しかも世界最速でW杯出場を決めた。だが、目標である優勝を成し遂げるにはまだまだ課題も多い。サウジアラビア戦はそのことを改めて考える一戦になった。