森保一監督は15日に行われるエルサルバドル戦の前日会見で試合2日前(13日)の練習で実施した11対11のミニゲームで採用した4−1−4−1(4−3−3)で臨むことを示唆した。相手との兼ね合いや状況によって途中で4−2−3−1へ変更する可能性にも触れた。

上写真=前日会見で森保監督は4−1−4ー1のフォーメーションでスタートすると示唆した(図版◎サッカーマガジン)

4−1−4−1で始まり4−2−3−1に変更か

 前日練習を見た上で最終的に判断すると断った上で、森保監督は15日のエルサルバドル戦について4−1−4ー1で臨むと公式会見で話した。13日の練習で行った11対11のミニゲームでは図の通りのメンバー構成だったが、これが基本になるとした。

 1トップを務めるのは上田綺世。代表では未だノーゴールであるものの、初挑戦となったベルギーリーグで22ゴールを記録し、その能力に疑いの余地はない。2トップや1トップ+1トップ下など、近くに『相棒』がいる構成の方が上田の得点力を引き出せるとの声もあるが、予想通りの先発であれば、今回は東京五輪組で攻撃ユニットを編成する。特に三笘薫との相性はよく、上田の力を知る選手たちが多いため、初ゴールの期待も高まるところだ。

 右のウイングは久保建英が務めることになりそうだ。縦に仕掛けるよりもカットインしてゴールに絡むプレーが得意なため、縦関係を組む菅原由勢が幅を取り、久保が積極的に中に入ってきて堂安律とのコンビネーションからゴールを狙っていくプレーが理想の形になる。久保の右ウイング起用というと、2022年3月のベトナム戦が思い出される。直前のアウェーのオーストラリア戦でカタールW杯の出場権を得たチームはアジア最終予選終盤の基本陣形となっていた4−1−4−1(4−3−3)ながら、大幅にメンバーを変えて試合に臨んだ。

 結果、チームはあまり機能せず、先制を許す苦しい展開となった。結局、途中から4−2−3−1に変更し、吉田麻也のゴールにより1−1で辛くも引き分けた。エルサルバドル戦2日前の練習においても、4−2−3−1を試しており、今回も状況次第で陣形を変える可能性はある。ただ、所属するソシエダでポジションこそ違えど、右からの仕掛けで幾多のチャンスを演出し、ゴールに絡んできた。今の久保であれば、代表のサイドでもその力を十分に発揮できるのではないか。

 インサイドハーフを務めるのは右が堂安律、左が旗手怜央だ。ともに後方からのパスの受け手となり、周囲の選手と連動する中で力を発揮できるタイプと言える。新たに10番を背負った堂安は、カタールW杯で世界に衝撃を与えたそのパンチ力で再びゴールを生み出すことができるかどうかが注目される。そして昨年9月以来の代表復帰となった旗手は、セルティックで見せてきた攻撃を加速させるような気の利いたプレーを披露できるかがポイント。川崎F時代からよく知る三笘薫が左サイドにいて、アンカーに守田英正が入ることは、本人の持ち味を出す上で大きなプラス材料と言えるだろう。「常にここに選ばれたいという気持ちでやっているし、それは昔も今も変わりない」という旗手の代表にかける思いにも注目したい。

 左のウイングに入るのは前述の通り三笘だ。独力でチャンスを生み出す稀代のアタッカーは3月シリーズでは周囲との連動に少し気を配りすぎたのかもしれない。3月のコロンビア戦で左サイドバックを務めたバングーナガンデ佳史扶は「三笘選手が(代表デビューの)自分がプレーしやすいようにしてくれた」と話していた。チームがサイドバックが内側にポジションを取る新戦術に初めてトライしたこともあり、三笘はそれを機能させることに注力していた印象がある。ただ今回は、その持ち味を存分に発揮できる舞台が整いそうだ。森保監督も、ボールの配給役として期待される守田も日本の強みが三笘と伊東純也らのいるサイドであると言い切っている。伊東はエルサルバドル戦はベンチスタートになりそうだが、三笘は周囲からのサポートも受けて、日本が誇る左の翼として自らのプレーにより集中できるのではないか。

 アンカーの守田は、東京五輪組で構成されるアタック陣を下支えしていくのが自分の役目だと自覚する。別稿で記した通り、前回の活動でうまくいかなかったビルドアップを向上させるイメージを膨らませており、たくさんボールに触れながらリズムを作る役目を担う。

 最終ラインは右から菅原由勢、板倉滉、谷口彰悟、森下龍矢。菅原は3月に続いての選出で、前回のシリーズでも2試合ともに先発しており、右サイドバックの定位置争いで一歩リードしている印象を受ける。冨安健洋が度重なるケガで招集外となっている中、板倉は最終ラインを支える不動の存在になりつつある。W杯後には自分たちの世代が引っ張っていかないといけないと覚悟を語っていたが、実際、チームにおける東京五輪世代の割合は増えている。今回の先発予想で言えば、実に7人が東京五輪参加メンバー。森下と菅原が候補だったことを考えれば、11人中9人が東京五輪世代である。

 谷口はビルドアップ能力において、日本ではトップクラスのセンターバックだろう。日本代表の課題としてビルドアップの向上が挙げられているが、3月シリーズは様々なトライをしたものの、いきなりでは難しく、どれも実を結ばなかった。3月の活動に参加していなかった谷口は「ちょっと考えすぎているというか、どこでボールを受けたらいいんだろうとか、どんどん縦パスや勝負のパスを入れていい場面でも少し躊躇してしまっていた。一人ひとりが考えながらやり過ぎているのかな、すっきりやれてないのかなって部分があると思っていました」と外から見た印象を口にした。確かな技術を持ち、狭いスペースにパスを通すことを苦にしない谷口の存在も、今回の試合に注目点と言える。

 左サイドバックは名古屋所属の森下だ。ホームスタジアムで代表デビューを飾る可能性は高い。練習でマッチアップした伊東純也の「異次元の速さ」に衝撃を受けたと話す26歳は、三笘や旗手らと同い年。2019年にナポリで開かれたユニバーシアードでは、前述の選手らとともに優勝を飾ったメンバーでもある。スピードと運動量に自信を持つ森下は、手薄と言われる代表の左サイドバックでポジションをつかむべくアピールしたいところだ。

 2日前の練習を見る限り、GKは大迫敬介の先発が濃厚だ。彼もまた東京五輪世代。海外経験豊富なシュミット・ダニエルやリオ五輪世代の中村航輔とのポジション争いは熾烈だが、巡ってきたチャンスをものにできるかどうか。安定したプレーでクリーンシートを目指す。

「試合ではチャレンジしていく部分、人やシステム、戦術的な部分も含めて、勝利を目指しながらもチャレンジすることはしっかりチャレンジしていきたいと思います」

 森保監督はチームとして成長するために、積極的にトライするとともに結果も求めると前日の公式会見で強調した。対戦相手のエルサルバドルについてはW杯で苦杯を舐めさせられたコスタリカと同等の力のあるチームと認識しているという。押し込む展開に持ち込んだ上で、攻めあぐねることなくゴールをこじ開けたいとした。

 今回の合宿では強度の高さやハードワークは前提として、攻撃時の優先順位の確認と縦への意識づけ、ビルドアップを向上を目指している。その成果を示すことができるか。エルサルバドル戦は15日・19時10分に豊田スタジアムでキックオフされる。

取材◎佐藤景

画像: 状況次第で試合途中から久保をトップ下に据えた4−2−3−1を採用する可能性もある

状況次第で試合途中から久保をトップ下に据えた4−2−3−1を採用する可能性もある


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