上写真=みんな笑顔! 田中碧がスペイン戦で決めた逆転ゴールは大会のハイライトの一つに(写真◎Getty Images)
■田中碧カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦/○2-1ドイツ=71分までプレー
・11月27日 グループE第2戦/●0-1コスタリカ=出場なし
・12月1日 グループE第3戦/○2-1スペイン=87分までプレー、1ゴール
・12月5日 ラウンド16/▲1-1(PK1-3)クロアチア=106分からプレー
「毎日本気で生きてきたけど」
田中碧は初めてのワールドカップを通じて、子どもに戻った。
「熱くなれたなと思います。勝つことや点が入ることがこんなにうれしいのかというのを久々に感じたというか、子どものときに戻ったような感情になるというか。それは本当にスポーツの魅力だろうし、サッカーの魅力だろうし、それを教えてくれたのはこのワールドカップだろうし」
そして、大人になった。
「そういう意味ではもちろん負けたので悔しさはあるし、一生忘れることはないだろうと思います。ただ、あのドイツやスペインに勝ったときのうれしさも一生忘れることはない」
喜怒哀楽のすべてを感じたワールドカップは人生を変えた。だからこそ、「シンプルにまだまだだなと思い知らされました。すべてが足りないと思います」の言葉に集約されるだろう。
グループステージ第3戦のスペイン戦では「三笘の1ミリ」と称えられたぎりぎりの折り返しから押し込んで、逆転決勝ゴールを決めている。
「結果としてゴールは取れたりしましたけど、自分の実力かというと、そうでもない部分も感じてはいます」
この3カ月、日記に「ワールドカップでゴールを決める」と毎日綴っていたことを明かしている。その思いが通じたゴールだったが、振り返れば、冷静だ。
最も強く感じたのが、この特別な舞台で勝つためにふさわしいプレーが足りない、ということ。
「国を背負って戦って自分本来のパフォーマンスを出すというレベルには至っていない。これだけやってもこれだけか…という感覚は、大会が始まってからずっと感じていました」
「毎日本気で生きてきたけど、これくらいしかできないというのは悔しいとすごく感じています」
ドイツに勝って、スペインにも勝ったからこそ感じる、もう一つ上のレベルの悔しさだということもできる。つまり、勝つことができたら、次は勝ち続けることが必要だということだ。
「ドイツやスペインに勝つことはそんなに簡単なことではないと思う。それを実行できたのは、僕たちもそうだし、すべての日本サッカーのレベルが間違いなく上がっているからだと思います。ただ、その結果として次のステージで戦い続けられるか、そこにはまだ差がありました」
どうやって追いついて、追い越していくか。もう一度、すべての人とともに戦う決意があふれてくる。
「僕はプレイヤーなので、自分自身の力を上げることに力を注がないといけない。そして、すべての人がこの4年間でその差を縮められるかを考えることが、日本サッカーの次につながると思います。前回のロシア大会を経験した(長友)佑都さんや(吉田)麻也くんや(川島)永嗣さんたちがずっと4年間考え続けてここまできたと思いますし、今回の悔しさを経験したプレイヤーだけでなく、いろいろな人が次の4年間に向けて自分自身にできることをやることが必要だと思います」