上写真=宮市亮は10年ぶりの代表に「身が引き締まる思い」(写真◎スクリーンショット)
「チームのために何ができるか」
この10年間で、緊張の種類が変わった。
日本代表にデビューした2012年に感じたのは、「個人のため」の緊張だった。10年ぶりに選ばれたいまは「皆さんの期待に応えなければいけないチームとしての緊張感が高ぶっている」という。
だから、E-1選手権に臨む日本代表の一員として自らがあるべき姿は、「チームとしてこの大会を勝ち取りにいくピースでしかない」と迷いなく表現する。
3度のヒザの重傷を経て、最後は引退も覚悟した。しかし、日本に戻り、横浜F・マリノスの一員となり、今季はプレー時間も増やしてピッチの中で存在感をぐんぐんと高め、ついに日本代表へと帰ってきた。
「ヒザの前十字靭帯を3回目に損傷したときに、ドイツでこのまま手術したら引退しなければいけないという話もされて、契約も切れる段階だったので、そのままキャリアが終わってしまうかもしれませんでした。当たり前にプロとしていられるのが、当たり前のことではないと身を持って体験してから、日々感謝できるようになりました」
昨年7月に横浜FM入りしたあとは出場も限られ、わずか2試合、41分間のプレーにとどまった。それでも、光はあった。
「試合に出られないときも、サッカーをするだけで幸せを感じていたので、ポジティブに取り組むことができました」
今年はすでに、リーグ戦13試合に出場し、3ゴールを挙げている。「歩けなくなって歩ける喜びを知った」ところから始まり、「本当の意味で感謝できるようになった」と心のしなやかさも手に入れて、日の丸をつけるところまで戻ってきた。いや、「新しい宮市亮」としては、初めての日本代表選出と言えるかもしれない。
「感謝の姿勢はピッチの上で見せるしかないと思います。いまケガで苦しんでいるアスリート、小学生から学生までもたくさんいると思いますけど、リハビリの時間がいつか報われる時間が来ます。苦しいときもあると思うけれど、ほとんど引退宣告された選手が代表にまた入れるチャンスというのは、続けていればあるんです。だから、勇気づけるプレーしていきたい」
ここまでの代表キャップは、香川真司に代わってピッチに出た2012年5月のアゼルバイジャン戦、清武弘嗣と交代で終了間際に登場した同10月のブラジル戦の2つ。再び巡ってきたこのチャンスを、自分のエゴのためではなく、チームのために生かすつもりだ。
「チームのために何ができるか。試合に出る出ないに関わらず、E-1選手権を勝ち取るために最大限の力を出したいと思います」