上写真=練習初日からハツラツと動きを披露していた伊藤洋輝(写真◎山口高明)
左足の正確なキックは大きな武器
伊藤は今回の6月シリーズで唯一の初選出された選手だ。W杯出場を決めたチームにプラスアルファをもたらす新戦力として期待される存在ということだろう。昨年6月にジュビロ磐田からドイツのシュツットガルトに期限付き移籍すると、早々にアピールに成功し、トップチームデビューを果たした。当初は戸惑いも見られたが、徐々に安定したプレーを見せ、正確な左足キックと1対1の強さを発揮して不動の存在になっていった。結果、チームの1部残留に貢献し、今月20日には完全移籍が発表されることになった。
成長著しい伊藤は、自身が「小さい頃から目指していた舞台」に立つため、今回の合宿が大きな意味を持つことを理解している。練習初日に実施されたオンライン取材では、日本でプレーしていた時代から自身の武器だった左足による組み立てやゴールを導くパスを「日本代表のために出せたら」と持ち味のアピールを誓った。
ドイツで1シーズンを過ごし、1対1の強さや粘り強い守備にも磨きをかけてきた。シュツットガルトでは3バックの左や中央、4バックの左CB、さらに左サイドバック、磐田時代にはボランチでプレーしていた経験もあり、まさしく守備のオールラウンダーと言える。そんな万能性に加えて、一気に局面を変えるロングパス、とくに対角に放つパスという、他の選手が持ちえない大きな武器も備えている。
前回のロシアW杯の際に、伊藤は『AFC U-19選手権』に向けて準備を進めるチームの一員としてA代表のキャンプ地(ロシア・カザン)でのトレーニングに参加していた。時にはA代表との紅白戦に臨み、W杯を戦うチームのレベルを体感した。当時、U-19代表を率いていた影山雅永監督は「われわれのA代表がコロンビアをねじ伏せたということに、選手たちが本当に喜んでいました。われわれはUー20W杯に出場することが目的の一つですが、それプラス、選手個人個人が、どんどん上のカテゴリーに上がっていってほしい。いまいるフル代表の選手たちを脅かすような存在が、この集団から出てきてほしい」と語っていたが、そのチームには久保建英がいて、菅原由勢や大迫敬介がいて、そして伊藤洋輝がいた。
あのとき影山監督が期待した状況が少しずつだが、着実に訪れつつある。初日の練習で、伊藤はハツラツとした動きを見せていた。憧れの舞台に上がるため、伊藤にとって重要な6月シリーズが始まった。