衝撃の2ゴールから2日。カタール・ワールドカップ最終予選のオーストラリア戦で、交代出場からわずか10分で2ゴールという大活躍の三笘薫はしかし、怖いぐらいに冷静だ。日本代表選手として次のステップに進むために、ベトナム戦に集中している。

上写真=三笘薫は「攻撃だけではなく守備でもできることを証明しなければ」とベトナム戦を見据える(写真◎スクリーンショット)

「時間を作らせないようにする意識」を応用して

 夢うつつ、からの切り替えは完了だ。3月24日のワールドカップ最終予選第9戦、2-0で勝って本大会出場を決めたアウェーのオーストラリア戦で最後に衝撃的な2ゴールを決めた三笘薫は、あの興奮が遠い昔のように、元通り静かだ。

「うれしい気持ちと現実なのかわからないという感じでしたけど、実感してきて、貢献できて良かったと思います」

 84分にピッチに入って89分に先制ゴール、さらに5分後に自慢のスラロームドリブルから追加点と、ド派手な活躍だった。

 昨年夏にヨーロッパに渡り、ベルギーのウニオン・サンジロワーズでプレーする。その日々が成長の糧になったことは、本人が実感しているところだ。例えば、メンタル。

「プレーでより自分を出して結果を出さないと試合に出られなくて、日本よりコミュニケーションが取れない分、結果に対する執着心は日本のときよりも増したと思います」

 日本のようなあうんの呼吸は望めない。でも、結果こそが最大のコミニュケーションツールなのだ。

 ほかには、筋肉。

「フロンターレのときにウイングで求められた強度と、ベルギーでウイングバックに求められる強度はまったく違うので、適応するのに時間がかかりました。スプリントの長さと守備の対応のところの筋肉も違いますし、当たりの根本的なところも違うので。でも、徐々に徐々に身体的強さは養ってきたので、フロンターレ時代から成長したのは確かだと思います」

 ウイングはより前で、ウイングバックはより後ろで守備をするというエリアの違いがまずあり、タスクも変わってくると説明する。

「ウイングではプレッシャーをかけてコースを限定することが多く、止まるシチュエーションは多くありません。でも、後ろ(ウイングバック)になると、止まってから、振り切ろうとしてくるところについていったり、姿勢が低くなる部分があって、そこの負荷はかかっていると思います。練習でやっていくうちにそういう体になっていくので、いろんな負荷をかけながらやっている感じですね」

 そんな守備の新しいエッセンスが、逆にあの2ゴールの瞬間にも生きた。

「ベルギーでは、1対1のシチュエーションが多いし、どんどん突っ込んでくるので、そこが日本と違います。時間を作らせないようにする意識が強くなりました」

 だから、逆手に取ればいい。時間を作らせないようにしてくる前に、作ってしまえばいい。2点目はまさに、最初にマークについてきた相手に飛び込ませない間合いを作り、自分が止まって相手の足も止めたことでこちらの時間軸に持ち込み、勝負あり。右で崩す間に中央に進入するのも、左から自らするすると抜けて突き刺すのも、川崎Fで何度も見せてきた「ウイング三笘」の真骨頂だ。

「フロンターレのときも途中から出て結果を残してスタメンになって、勝ち続けることでスタメンを維持できました。(代表でも)次にスタメンで出たときに勝利できるかもそうですし、プレー内容によっても変わってきます。ワールドカップの出場は決まっていますけど、決まっていない意気込みでやらないと。スタメンでもできることを証明したいと思います」

 本大会はまだ先の話。三笘にとっていま最も重要なのは、目の前のベトナムを相手に最高のパフォーマンスを発揮することだけだ。


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