カタール・ワールドカップアジア地区最終予選で、11月11日にベトナムと、16日(現地時間)にオマーンとアウェー連戦を戦う日本代表。前回のオーストラリア戦で出色の出来を見せた田中碧は今回ももちろん選ばれた。その試合で採用した4-3-3システムの行方が注目されるが、田中はそのメリットをどのように生かそうと考えているのか。

上写真=オーストラリア戦で先発起用されて先制ゴール。田中碧のプレーにさらなる期待が高まる(写真◎小山真司)

シティでもリバプールでもなく

 いわば、救世主のような立場だろうか。ワールドカップ最終予選を1勝2敗と最悪の状況で迎えた10月12日のオーストラリア戦で先発出場、新しい4-3-3の布陣のミッドフィールドに立ち、いきなり8分に先制ゴールを挙げる活躍ぶりだ。最終的に2-1の勝利の立役者になった田中碧は、一躍脚光を浴びた。

 11月のアウェー連戦で再び代表に選ばれたのは、だから当然のことだ。

 田中はオーストラリア戦で日本代表の何を変え、目の前のベトナム戦でどう戦うつもりなのか。「循環」という言葉を使って説明する。

「特別なことよりは、自分が入ってチームががうまく回ればいい。その結果、勝てればいいと思っています。もちろん、自分で点を取りたいという思いは少なからず持っていますけど、チームの勝利のためにできることをしっかりやりたい。チームをうまく循環させられればと思っています」

 オーストラリア戦では遠藤航、守田英正とミッドフィールドを形成した。「メンバーの人選がボランチ3人だったので、僕のポジションもインサイドハーフではありませんでした」というのがプレーイメージ。遠藤が中央、右に田中で左に守田がオリジナルポジションだったが、「個人的にはゲームコントロール」を最優先事項に置いたという。

「3ボランチのイメージがあったので、守備でしっかり防波堤になることを意識していました。攻撃ではライン間から飛び出したりハーフスペースで受けて、という仕事をしていないので、(マンチェスター・)シティやリバプールのような4-3-3よりは、レアル(・マドリード)っぽいというか、タレントを生かしたものでした。もっとゲームコントロールしきれればよかったんですけど、でも初めてにしてはできたかなと」

 川崎フロンターレ時代に経験した4-3-3は、クラブチームならではの練度が深まってできたもの。前回のオーストラリア戦は、サウジアラビアに敗れて移動もある中で、わずか中3日で迎えたから、できることは限られていた。だから、選手全員が正しい場所に立てるようにと意識してボールが巡っていく「循環」にフォーカスしたというわけだ。

 今回は11月11日にベトナムと、16日(現地時間)にオマーンと戦う。ともにアウェーゲームで移動もあり、同じように時間が豊富に与えられるわけではない。2試合で勝ち点6が求められる。だから、システムのことだけで言えば、これまでの積み上げを生かして4-2-3-1を採用するかもしれない。好プレーを連発した前回からの継続を優先して、4-3-3で臨むかもしれない。その選択は注目の的だ。

 川崎Fからはセンターバックの谷口彰悟、右サイドバックの山根視来が復帰し、インサイドハーフや左サイドバックをこなす旗手怜央が初代表で。昨季まで川崎Fのアンカーとして鳴らした守田も、川崎F育ちのセンターバック板倉滉も引き続き選ばれ、夏まで川崎Fの左サイドを制圧していたウインガーの三笘薫も初めて選ばれている。これを「川崎F的4-3-3」へと寄せていく布石と見る向きは多い。

 実際にピッチに立つ田中はどう考えるか。

「守備のやり方が似ているところはありましたけど、攻撃に関してフロンターレと同じやり方かと言えばそうではないと思います。(中盤の)3人とも少し下がってプレーするし、サイドバックを高い位置に上げたりするフロンターレのやり方の感覚はありませんでした。ただ、ボールを握るためにどこにいてどうするべきかで自ずとそういう(インサイドハーフのような)立ち位置になったかもしれません。今回はどうなるか、フォーメーションも4-3-3でやるかわからないけれど、感覚は少し違うのかなと思います」

 森保一監督がどんな戦い方を選択するにしても、ベトナムは5バックで堅く守ってくるという予測も立つ。田中がイメージするのは2つ。まずは「崩し」の方法論。

「僕もフロンターレでそういう(守備を固める)相手と何回もやったし、5バックに対して苦戦していましたけど、必要なのは幅を使うことだと思っています。68メートル(の横幅)を5人で守らせるか、それが50メートルで5人かで違ってくるので、幅を使って選手間を広げることが大事だと思います」

 もう一つが、「大胆」。

「でも、崩すのは簡単ではないので、セットプレーやクロスからアクシデントっぽく入ったり、ミドルシュートも1点は1点で変わらないので、力ずくでこじ開けるのも大事だと思います。崩すイメージがありながらも、大胆にいくイメージで。慎重になりすぎず、大胆になりながら、でもバランスを気をつけていきます」

 ゲームコントロール。防波堤。幅。慎重。力ずく。循環。田中の脳裏をめぐるイメージの数々が、日本に勝利をもたらすキーワードになりそうだ。


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