上写真=11月9日に集合。川島永嗣は多くの経験を武器にポジションを狙う(写真◎JFA)
「ダイナミックさももっと増やしていかなければ」
1983年生まれだからもう37歳。年齢でプレーするわけではないが、日本の守護神、川島永嗣は日本代表でも最年長となった。
「代表が去年の11月から活動できない中で、この前の10月の活動では久々にみんなの顔を見ることができて、チームメートたちが成長を遂げているか、どういう環境でやっているのかを肌で感じられた部分があります。その中で僕も刺激を受けてできました。僕自身、年齢的にはどう考えても一番上ですけど、若い選手を含めてそういう姿を見ることができて刺激になりました。チームに戻ってもモチベーション高くできて、いい意味で11月シリーズを迎えることができます」
その10月シリーズは0-0の引き分けに終わった9日のカメルーン戦、終了間際のゴールで1-0で勝利を収めた13日のコートジボワール戦ともに、川島の出場機会はなかった。権田修一、シュミット・ダニエルがそれぞれゴールを守り、連続無失点。所属するストラスブール(フランス)でもリーグ戦で開幕から2試合に出場したものの、9月から出場なしが続いている。
だが、10月シリーズで刺激を受けたというように、今回も川島の心を高める出来事がいくつもある。例えば、長友佑都との「再会」。今回の代表活動の直前のリーグ戦はストラスブール対マルセイユというカードだった。川島はベンチから戦況を見つめていたが、相手には長友がいて、フル出場している。
「佑都とも代表で長くやらせてもらっていますし、いろいろな時間を過ごしました。でも、こうしてフランスで出会えるとは思ってもいなかったので、対戦相手としてプレーする姿を見てうれしかったですね。自分自身もチームでチャンスを探っている中で、佑都もポジション争いが厳しいけれどピッチに立っていて、いい刺激をもらえました。いい形で代表に還元できればと思います」
あるいは、中村憲剛の引退表明。川崎フロンターレと日本代表のチームメートとしてともに戦った仲だ。
「本人にも言いましたけど、まだ試合が残っているのでお疲れ様とは言いたくないです。でもやはりいろいろな意味でフロンターレと日本代表で一緒にやっていい時間も共有しましたし、お互いに良くない時期も共有してきました。自分はフロンターレにいたときは優勝をつかめませんでしたけど、彼は優勝して、今回こういう決断をしたというのは、寂しい気持ちもありますけど、逆に一緒にやった仲間として誇らしい辞め方なんじゃないかなと思います。彼自身が表現できるプレーもそうですし、存在価値も含めて、素晴らしいキャリアを過ごしてきたと改めて思い知らされたという感じですね」
今回の代表活動の舞台となるオーストリアのグラーツは、思い出深い街でもある。2010年南アフリカ・ワールドカップの直前にテストマッチが行なわれ、そのイングランド戦から川島が代表のゴールマウスを任されてそのまま本大会で大活躍した、いわば「出世街」。10年後の再訪だ。
「そのことは覚えてなかったですね。あのときはどの街で、どのスタジアムで試合をするか気にする余裕がなかったけれど、そう考えるとその街に帰ってきたのは感慨深いですね。代表として、選手として、ここに戻ってくることができたのは幸せです」
そのグラーツには現在、イビチャ・オシムさんが住んでいる。言わずとしれた、元日本代表監督だ。当時の川島は川口能活、楢崎正剛に続く第3GKとして代表入りした若手だった。オシムさんはさらに、川島にとっては「大先輩」。現在所属しているストラスブールは、オシムさんがかつてプレーしていたクラブなのだ。
「イングランド戦のことは覚えていなくて、(グラーツでの試合ということで)オシムさんのことを考えていました。代表にいさせていただいた中で、オシムさんとの時間は特別でした。試合に出してもらうことはなかったですけど、いろいろな意味で大きな刺激くれた監督です。オシムさんはストラスブールでもプレーしていたということで、もし会えたらそういう話もしたいなと思っています」
11月のグラーツで迎えた、川島のプレーヤーとしての軌跡をたどるかのような、不思議な時間。
「10月に引き続いてこういう形で試合ができるというのは、いまの日本代表にとってはワールドカップ予選に向けても、自分たちが成長していく点でもこの機会は大切です。ヨーロッパのクラブに所属する選手しか来ることができませんが、チームとして成長していく時間にしたいと思います」
「前回は久々に集まって、短い時間の中でできたことも、2試合目で結果を残したことも大きかったですね。ただ、自分たちが目指すものやそれぞれのパフォーマンスはもっともっと良くなるはずです。リスクを負って攻撃していかなければならないし、ダイナミックさももっと増やしていかなければいけません。結果を求めながら、質をどう追い求めていくか。今回はそれを表現していかなければならないと思います」
思い出が交錯する11月の2試合。川島が再浮上のきっかけをつかみにいくには、最高の舞台ではないだろうか。