上写真=オランダ遠征に参加した川島永嗣(写真◎JFA)
僕は横からサポートする
「待ちに待った機会」と今回の代表活動で最年長37歳の川島は言った。
「選手、スタッフも含めて、ずっと試合がないなかで、もやもやした気持ちもあったと思います。サッカーファンもずっとこのときを待ち望んでいたと思うので、本当にいま、みんなと合流できてうれしいし、試合に向かって行ける喜びに満ちあふています」
1年ぶりの代表戦。その意味を噛みしめた。今回の遠征には東京五輪世代の選手が7人含まれる。森保一監督は経験ある選手からいろんなものを吸収してほしいと若い選手について話すが、影響を与える側の川島にも、伝えたいものはあるのだろうか。
「もちろん自分に経験があったり、年齢も上ですし、もしかしたら自分の方が多くのことを知っている部分もあるかもしれません。ただ今はヨーロッパでプレーする選手が増えていますし、それがスタンダードになりつつある。どちらかというと僕が教えたり引っ張ったりするよりは、逆に若い選手がチームを引っ張っていくという意識でいる方がチームは確実に伸びていくと思います。そういう意味で僕は横から支える気持ちでいいんじゃないかなと。若い選手たちには、そういう能力やキャラクターがあると思っています」
3度のワールドカップを経験し、91キャップを数える守護神は冷静に今を見つめた。
「これは僕だけの考え方かもしれないですけど、若い選手に何かを伝えることと実際に経験することは違うと思う。予選の厳しさやプレッシャーは実際にピッチに立たないと分からない部分も多い。試合の中で若い選手が肌で感じることがチームとしての成長し、次のワールドカップにもつながると思います」
来年3月に再開が予定されているワールドカップ予選も見据え、さらにはその先のカタール・ワールドカップをも見せて若手の成長を促していくつもりでいる。
所属するストラスブールでは、新型コロナウイルスの感染者9人が出て、活動を制限された。コロナ禍におけるサッカーとは? 日本代表戦とは? いま自身がプロ選手でいることの意義について、多くのキャリアを重ねてきた川島は自論をぶった。
「多くの選手のそうですし、多くの人々もそうですけど、今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなったいう部分はあったと思います。ただ、色んな状況や変化に人は対応していかなければならないと思いますし、その中で自分がどれだけアダプトできるかというのはあると思います。そうした与えられた新しい環境の中でどれだけ高みを目指して、そういう(制限された)期間を新たなものを作る時間に変えられるか、という意識ではいます」
「日本代表はすべての人にとって夢だと思います。その意味で、そういう場所がこの1年間、多くに人に見せられなかったことは、大きな時間のロスでした。こうして試合を見せることで子どもたちにも多くのものを与えられると思っていますし、多くの人にとっての新たな希望を与えられると思います」
すべての人にとっての夢ーー。オランダから日本へ、川島はそんな思いを届けるつもりだ。