上写真=2019年の日本代表デビューによって、さらに高みを見据えることに(写真◎Getty Images)
橋本拳人、FC東京と「18」への思い。孝行息子の終わりなき旅◎前編はこちら
自分のレベルを上げたい
憧れの石川直宏から受け継いだ背番号18を背負い、FC東京の象徴となることを決意した橋本拳人。成長とともに新しい意欲が芽生えるのは当然だった。海外のクラブでプレーしたい。その思いは日増しに心の中で広がっていく。
「プロに入ったときから、海外でやってみたいという漠然とした思いはありました。最近では日本代表に入ってたくさんの海外組の選手から刺激をもらって、厳しい環境に身を置かなければいけないんだなと思いました」
階段を一つ登れば、さらに上に進みたくなる。そのために必要なのが「厳しさ」だと気づいた。
「(海外でプレーすることで)タフな選手が多いというのを一緒にやって感じましたし、Jリーグでやっている環境とは大きく異なって、環境的にも厳しかったりコミュニケーションも難しかったりと、すごく困難がたくさんあると聞きました。僕にはそういった困難が必要だと思ったし、それを乗り越えて強くなっていけるんだなと強く思いました」
「FC東京でプレーしている方が、近くに家族もいたりいままで指導してくださったりした方もお世話になった方もたくさんいて幸せだと感じていましたけど、僕が目指しているワールドカップで活躍することや夢のことを考えたら、自分が厳しい環境に身を置かなければといけないと思いました」
「もっとタフな選手になりたいですし、チームがうまくいかないときや厳しいときに自分を発揮できる選手になりたいんです。自分のレベルを上げたいという思いが一番強いですね」
自ら困難を求めて進んでいく。それはFC東京のアカデミー時代からの教えが根底にある。「アカデミーで常に言われたことは、どんな困難にも立ち向かって一歩一歩乗り越えていくことを繰り返していった先に、自分の夢をかなえることができるのだ、ということでした」。こんなところにも、青赤魂。
ワールドカップで中心選手として活躍する
頭の中は近未来のイメージでいっぱいだ。
ロシア・リーグについては「激しいプレーが多いリーグだな、体の大きい選手がたくさんいるのでフィジカル的に厳しいリーグなのかなという印象です。いまやっているプレーを評価してもらっていると思うので、それを出しつつ、さらに成長できればというのは意識しているし、何より監督が求めるプレーを出したいと思います」
「自分のプレースタイルはだんだん確立されてきたし、生きる道は分かってきています。海外に行ったら求められるプレーは変わってくると思いますが、どの監督でも求められることをしっかりこなせるような選手にならないといけないなと思います」
「プレー面ではフィジカルが強い相手にそこだけで臨むのではなく、日本人の良さである頭を使って機敏に動くところや、自分で言えば柔軟性、読みの部分で勝負していきたいと思っています」
ボールを激しく奪いにいく、という「得意技」を繰り出しつつ、試合の状況を読んでコントロールし、チームプレーを心がける。FC東京で培ってきた、自分のあるべき姿を見失うつもりはない。
海外移籍を決断したのは「今年27歳になるので年齢的にラストチャンス」で「行かなければいけない」ととらえたことと同時に、より大きな舞台でのプレーを望んだから。それが、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)やUEFAヨーロッパリーグ(EL)だ。
「CLやELに出る可能性があるということは最初に話をもらったときに感じたので、新しい舞台でプレーできるのは楽しみで、自分がどこまで通用するか楽しみです。CLに出るのは夢でもあって、まずはロシアで上位に入らないといけないので、そこを目指したい。経験できればまた成長すると思います」
そして何より、ワールドカップだ。今回の決断の最大の理由が「ワールドカップに中心選手として出たい」というところにある。
橋本がこれから生きていくロストフの街は、モスクワから北東へ220キロほどのところにある。私たちサッカーファンにとっては、2018年ロシア・ワールドカップのラウンド16で日本がベルギーに衝撃的な逆転負けを喫した、あの忌まわしい「ロストフの悲劇」の記憶が眠る場所だ。
「話が来たときに、ここでワールドカップのベルギー戦があったんだと思って、日本人が悔しい思いした場所だなと。借りを返すではないですけど、その地でプレーできることをすごくうれしく思いますし、僕がその地で『ロストフの奇跡』を起こせるように頑張りたいと思います」
だから、次の夢はこれだ。
「CLに出てそこで活躍できれば、自分にとっては大きな成長かなと思いますし、FCロストフの所属選手としてワールドカップで活躍したら、『ロストフの奇跡』になるのかなと思います」