なでしこジャパン(日本女子代表)は明日3日、日本時間23時からAFC女子アジアカップの準決勝に臨む。相手は中国女子代表。近年は日本優位だが、今大会好調の選手も多い。キーマンをしっかり抑え込み、調子を上げてきた日本のアタッカー陣の力を示したい!

上写真=菅澤優衣香の4得点などでタイに7発快勝し、4強進出。中国戦も好調な攻撃陣の爆発なるか?(写真◎AFC)

文◎西森 彰

過去の戦績は五分も近年は日本優位

 女子アジアカップで4強入りを果たし、なでしこジャパンはFIFA女子ワールドカップ2023のチケットを手にした。準決勝の相手は「スティールローゼス」の愛称で知られる中国だ。ここまでで41戦を戦い、17勝17敗7分け(筆者手元集計)と五分の成績が残っているが、その内訳は好対照だ。20世紀の16戦は中国が圧倒的に上回り、日本が勝ったのは宮内聡監督率いていた時代に、宮本ともみ(現代表コーチ)のゴールで勝った1勝のみ。21世紀に入ってもしばらくは苦戦が続いたが、2006年からは日本が圧倒するようになった。

 女子ワールドカップ・ドイツ大会出場前年に行われた2010年の女子アジアカップ(成都で開催)では3位決定戦で対戦し、2-0で勝利した日本がアジアで最後の出場切符を得て、翌年の世界制覇への道を切り開いた。一方、6年前のリオ・オリンピックの予選では、手痛い敗戦を喫して本大会出場を逃す直接的なきっかけとなった。

 日本同様に、東京五輪後、ガンバ大阪などでプレーした賈秀全前監督から、シュイ・チンシャー監督に指揮官が交代した。新たな指揮官は、東京五輪のチームに大きなテコ入れを行ない、半数の選手を入れ替えている。

 7番のワン・シュアンがこのチームの核だ。今大会もここまで5得点で、正確な左足はセットプレーでも脅威。キープ力、突破力にも長ける。前監督の下では、右サイドハーフに置かれて、カットインからのシュートを狙う場面も多かった。6番のチャン・シンは、右足で左コーナーキックを担当することが多く、ワン・シュアン同様にプレーエリアは左右中央を問わない。

 最前線でターゲット役として活躍するのが11番のワン・シャンシャン。少々の数的不利は苦にせず、浮き球、混戦からの得点も多い。ルーズボールもしっかりと追う、頼りになるキャプテンの1トップで、グループリーグは戦った。ベスト8のように、2トップならトッテナムでプレーする、18番のタン・ジャーリーが名乗りを上げる。こちらは、得点に対する嗅覚が優れたフォワードで、ゴールを奪う仕事に専念する。

 13番のヤン・リーナーが左のボランチを務め、前後にパスを散らす。今大会、ヤン・リーナーのパートナーを務める時間が長いのは23番のガオ・チェンだが、展開力では目立つものを発揮していない。ベスト8のベトナム戦で先発した10番のチャン・ルイのほうが怖い。代表キャップ150を超え、リオ予選時は、日本から先制ゴールを挙げている。

積み上げを証明する準決勝に!

画像: 準々決勝のベトナム戦で先制ゴールを挙げた中国のワン・シュアン。2018年のアジア年間最優秀選手だ(写真◎AFC)

準々決勝のベトナム戦で先制ゴールを挙げた中国のワン・シュアン。2018年のアジア年間最優秀選手だ(写真◎AFC)

 ゴールキーパーは東京五輪で控えを務めていた1番のチュー・ユーが2試合に先発しているが、22番のチャオ・リーナーもイラン戦に出場している。チャオ・リーナーはリオ予選などでなでしこと対戦し、182センチの長身を誇る。最終ラインは4バックで、中央は3番のワン・シャオシュエと4番のリー・ジャーユエ。右サイドは、グループリーグではベテランの14番ロウ・ジャーフイが務めていたが、ベスト8では東京五輪でレギュラーだった2番のリー・マンウェンが、スタートから出ている。

 8番のヤオ・ウェイ、五輪最終予選の韓国戦で5番のマー・チュンとダブルボランチを組んでいた。今大会は、左サイドバックに入っているが、マイボールになると高い位置まで顔を出し、局面打開を図ってくる。同サイドには、上下動が活発な清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)。ふたりのポジション取りを巡る駆け引きも見どころになりそうだ。

 前輪駆動型の中国だが、とりわけアタッカーには警戒を払う必要はありそうだ。韓国のチ・ソヨンをうまく封じたように、ワン・シュアン、チャン・シンらキープレーヤー封じがポイントになる。また、タン・ジャーリーをはじめ、シュートレンジの長い選手が多く、ラインを下げ過ぎるのは禁物だ。そのためにも、日本のセンターバックがワン・シャンシャンとの競り合いに一つつひとつ勝っていきたい。

 日替わりで多くの選手が得点し、タイ戦では菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)が大爆発。格下ばかりと対戦してきた中国が、どこまで本当の顔を見せているのかはわからないが、ここまで3試合(インド戦が中止で1試合少ない)を見る限り、世界の舞台で競う欧米以上の強度はない。復活なった岩渕真奈(アーセナル/イングランド)らが、しっかりと先制点を奪い、主導権を握ってくれるだろう。

 新体制発足からの期間は、どちらも同じ程度だが、積み上げてきたものは日本のほうが上のはず。それを証明する準決勝となるように期待したい。


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