上写真=川口能活GKコーチとなでしこのGK3人が座談会で、このポジションだからこその意見交換(写真◎スクリーンショット)
「キーパーはいつもどおりにすることが大事」と山下
川口能活コーチとアジアといえば、2004年に中国で行われたアジアカップが語り草だ。準々決勝のヨルダン戦でもつれ込んだPK戦、劣勢だった流れを相手キックを2本ストップして勝ち抜き、その勢いのまま優勝までたどり着いたという伝説である。ほかにもオリンピック予選、ワールドカップ予選で何度となく日本の窮地を救った「日本の守護神」だ。
なでしこジャパンがAFC女子アジアカップに臨むにあたって、その川口コーチが、池田咲紀子、山下杏也加、田中桃子のGK3人との座談会に参加、「アジアで守る」ポイントを授けた。
まず語りかけたのは、「GKが勝たせる」ことの重要性だ。
「チームの最後尾で支えて、ゴールキーパーが勝たせる試合を見せてほしいと思います。大事な試合でキーパーの価値を証明できると思います。大事な場面で皆さんが最高の力を出せるようにいい準備をして、アジアチャンピオンになってほしいと心から思っています」
GKのポジションは一つしかなくて、試合中でも大会中でも、レギュラーを入れ替えることはほとんどない。だからこそ、「GKチーム」としての真価が問われるという。川口コーチ自身も楢崎正剛らと激しいポジション争いを繰り返し、試合に出る立場も出ない立場も経験した。
「代表に限ったことではありませんが、試合に出られないときは悔しさは当然、常に持っていました。ただ、チャンスというのはいつ来るかわかりません。どちらにしても練習ではとにかく雰囲気を盛り上げて、チーム全体のことをよく見ていました。サブの選手のポジティブな声掛けは、出ている選手には大きな力になりますし、そうすることで勝つ雰囲気が出来上がっていきます」
アジアならではの戦いで気をつけるべきことは、という池田の質問に答える形で、川口コーチは大事なことを3人に伝えた。
「当然、アジアのレベルは世界のレベルよりは低いとはいえ、キーパーのやるべき仕事は変わりません。ゴールマウスを確実に守ること、攻撃の起点になること。そのために、一つひとつトレーニングから試合をイメージして、ベストのプレーを発揮する準備をしっかりしていくことです」
平常心と想像力。どのレベルのどんな試合でも、変わらないことの大切さを改めて求めるのだ。その上で、より高いレベルが必要だと指摘する。
「もしかしたらゴールを守る機会がアジアの大会では少なくなるかもしれません。だからこそ、その少ない決定機に対して確実に防ぐ準備は高いレベルで求められるのです」
高い集中力こそ、アジア制覇のカギだ。
「いまの3人が日本で最高峰の3人ですから、力を合わせて日本のゴールを守ってほしい。誰が出ても勝てるチームだと思いますので、キーパーチームを大事にしつつ、試合に出た選手を全力でサポートしてほしいですね」
そんな川口コーチのアドバイスを受けて、池田は「ライバルでもありチームメートでもあり、キーパーは一番お互いがわかるポジションで、ライバルですが思いやれるのがお互いのためになります」、山下は「どんな環境でさえもキーパーはいつもどおりにすることが大事で、難しいけれどそれが基準になるんだと思いました」、田中が「(池田、山下の)2人ともオリンピックを戦ったり長く代表に関わっている中で、自信を持ってやっているといつも思います。プロフェッショナルだなと思って頑張らなきゃなといつも思わされます」と、それぞれに刺激を受けたようだ。
川口コーチは改めて、なでしこジャパンへエールを送る。
「日本はアジアでチャンピオンとして見られていて、この大会でなでしこジャパンは3連覇がかかっています。どこのチームも日本を倒すために全力でやってくるので、受け身になるのではなくて王者の戦いをしっかりと、圧倒できるような戦いをしてほしいと思います」
いよいよ1月21日のミャンマー戦から、3連覇への歩みが始まる。