上写真=池田太監督がAFC女子アジアカップ3連覇への意欲を熱く語った(写真◎山口高明)
大切にしていきたい言葉
――改めまして、なでしこジャパンの監督就任、おめでとうございます。国内キャンプを経て、2021年11月には国外組も合流してオランダに遠征、アイスランドとオランダと対戦して、0-2、0-0という結果でした。
池田太監督 ありがとうございます。オランダでの2試合は、ピッチ上のことについては、得点が取れませんでした。アジアカップに向けて攻撃のフィニッシュのところ、アイディアの共有を含め、個人で突破する力や決め切る力にアプローチしていきたいと思っています。
――新体制で始動して、まず選手たちがビビッドに反応したのが「奪う」というコンセプトについてでした。勝利を奪う、ゴールを奪う、ボールを奪う、という池田監督の指針に対して、選手たちが積極的でした。
池田監督 われわれのグループの連動、連係をもってすれば、もっとボールを奪う回数を増やせる、というアプローチから入りました。前線から相手のパスコースを限定しておいて、球際のところでは下がらずに一歩、足を出していくところのトライは出てきています。オランダ遠征でその部分の手応えはありました。まだ体のぶつけ合いで負けてしまうところはありましたけど、奪うことへの選手の取り組む姿勢、相手陣内でボールを奪う回数を増やしていこうという意識は、2試合を通じて選手には伝わったと思います。
――コンセプトの言語化が叫ばれますが、難しく複雑な言葉だと逆に混乱を招きます。その点で、池田監督の言葉は端的で力強く、まっすぐに選手に届いている印象を受けます。
池田監督 代表の活動期間は限られていますので、なでしこはこういうチームだというコンセプトをわかりやすく伝えて、集まったときにバチっとスイッチが入ると言いますか、意識が変わるようなものは何がいいかなということで、チームの共通言語として「奪う」に思い至りました。
では、なぜ「奪う」になったかというと、一つは2011年にワールドカップで優勝して世界チャンピオンになってから10年、もう一度、世界一を奪還しようという意欲を高めたかったから。実際のゲームの中では、もっともっと相手からボールを奪えるのではないか。勝つためにはゴールを奪わなければいけない。勝利をつかむ、という言葉よりももっとインパクトのある言葉だったらなんだろう。そんなことをいろいろと考えてミックスしたときに「奪う」という言葉が出てきたんです。
選手の頭の中でもイメージが定着することにはなったと思うので、引き続き大切にしていきたい言葉として使おうと思っています。
――ほかにも具体的なプレーに呼称をつけ、キャッチーでわかりやすい「共通言語」を作ることで、ピッチ上の選手の口からもそのフレーズが聞こえてきます。
池田監督 私の中ではそういう言葉がたくさんあって、ただスタッフと会話をしている中で不採用になったものもたくさんあります(笑)。難しいことを言っているわけではなくて、選手とプレーのイメージを共有できればと思って発する私の言い回しが残っているだけなんですよ。