上写真=組分け抽選の模様を見守る高倉麻子監督(写真◎JFA)
光になれるような戦いをしたい
組分け抽選の結果を受けて会見に臨んだ高倉監督は落ち着いていた。「対戦相手が決まってホッとしています。ちょっと前から対戦相手は気になっていたので、明日だなとドキドキわくわくでしたから。これで落ち着いていろんなことを進めていけると思います」。それが第一声だった。
「カナダもイギリスも、イギリスはイングランドとしてですが、よく対戦はしています。チームの核になる選手やスタイルは分かっていますが、逆に相手も自分たちのことはよく研究していると思う。チリに関しては現時点で多くの情報はないですが、南米なのでテクニックの高い選手がいると思いますし、勝負に対してチームとしても老獪なものを持っているのかな」
グループEで対戦することが決まった3か国について率直な印象を語った。とくにイングランド(東京五輪にはイギリス4協会の統一チームで出場)とは近年、頻繁に対戦し、悔しい結果に終わっている。2019年の女子W杯ではグループステージで対戦して0-2で敗れ、翌2020年のシーブリーブスカップでは0-1で屈した。
「よく当たるんですよね。イングランドは非常にパワーのある選手が多く、うまさや変化をつけることは少ないですが、ホワイトという素晴らしいストライカーがいて、抜け目なく試合を決めてくる。試合が終わるたびに内容を振り返って、決して負けていないと思うのですが、結果は負けている。悔しい思いをしているので、今度こそという思いはあります。いかに爆発的な一発を出させないかがポイント。それは選手たちが敗戦の中で学んできているものだと思うので、対応していけると思いますし、やられてばかりはいられないので、ぜひ良い試合をして勝ちたい」
決勝トーナメント進出を見据えても、イギリスとの対戦が一つのポイントになるのは間違いないところだろう。そして指揮官はこれまでのチームとしての経験と選手個々の経験について自信を口にした。点として存在していたチームとしての試みもいま線となり、その線が太く強くなりつつあると実感しているという。
「(これまでの活動の中で)私自身が強いチームとやっていきたいという思いがありました。難しい試合も多かったし、選手選考でも軸が見えてこなかったり、決まってこなかったりという中でここまできていました。ただ今、この段階になって、選手のパフォーマンスの充実度について、私自身は高い期待感を持っています。年代別代表で優勝を経験した選手たちが多い中で、(五輪では)恐れずにプレーできるんじゃないかと思う。あまりどこと対戦するからといって引け目を感じる選手はいないし、逆に『やってやる!』というメンタリティーを持った選手が増えてきたので、期待をしていきたい。今まで結構多く傷ついてきたので、その分を返す番になってきたと。驕ることなく謙虚に、自分たちの足元を見つめて一つひとつ階段を上がっていきたい」
多くの選手を試しながらコアメンバーを見いだしてきた。アンダー世代で世界一を経験した選手たちも、ようやくなでしこジャパンの中で力を発揮するようになり、競争力も高まっている。高倉監督が求めてきたチームの形になりつつあるが、ここまでの取り組みのすべては東京五輪でメダルを取るためにやってきたこと。そのことを指揮官は改めて強調した。
「メダルは、みんなが待ち望んでいるもの。秋にプロリーグも始まりますし、東京五輪はいろんなことがある中での大会になりますが、メダルを取って女子サッカーのみならず、勇気を持ってみんなが前に進めるような、光になれるような戦いをしていきたい」
「アメリカと決勝の舞台で戦いたいというのはありますが、私たちは一歩一歩、大事に試合を戦っていくだけです」
日本の初戦は、7月21日。札幌ドームでカナダと対戦する。