上写真=小見洋太がトーキックを選んで貴重な先制点をたたき出した(写真◎J.LEAGUE)
■2024年10月13日 ルヴァンカップ準決勝第2戦(@U等々力/観衆21,159人)
川崎F 0-2 新潟
得点:(新)小見洋太、太田修介
※新潟が2勝で決勝進出
「プライドみたいなものはあります」
「本当に最後の勝負だと思っていました」
ルヴァンカップ決勝進出をぐっと近づける値千金のゴールを決めた小見洋太は、自分に背水の陣を敷いていた。ここまでの自分のプレーに納得がいかず、巡ってきた準決勝第2戦の先発というビッグチャンスを逃すわけにはいかなかった。
31分、その思いがネットを揺らした。ペナルティーエリア内に斜め右に入っていって、長谷川元希のパスを引き出してシュート。GKチョン・ソンリョンを破った。2試合合計で5-1とする貴重な先制ゴールだ。
「あの局面だけじゃなくて、背後(のスペース)はずっと立ち上がりから狙っていました。そこでようやくいいパスを受けることができて、本当に落ち着いて流し込めたゴールです。(GKとの)距離は近かったんですけど、まったく慌てることなく、枠に入れることと、キーパーに当てないことだけを意識して蹴り込みました」
冷静さともう一つ、フィニッシュワークに工夫を仕込んだ。
「トーキックで蹴ったんです。うまくタイミングを外せて、そこもよかったのかなって。時間をかけちゃうとキーパーが出てきてコースが狭まってしまうので、できるだけ広げる意味で、正確性よりも速さを優先しました」
そこはやはり、生粋のストライカーである。左サイドハーフとしてプレーすることが多いが、ボックス内への裏抜けのランと冷徹なフィニッシュは、まさに「ストライカー」のそれ。
「やっぱりフォワードでプロになりましたし、そこは譲れない部分というか、プライドみたいなものはあります。だから、ポジションに関係なく、ゴールを奪える場所があったら飛び込んでいきたい気持ちがあるんです」
ゴールへのがむしゃらさがときに悪い方に出ることもあったのだが、それを改善できたことを示したのが、準決勝第1戦の4点目、星雄次のゴールのシーンだった。
右からの小野裕二のパスを左で受けてカットイン、強引に右足を振るのかと思いきや、中の橋本健人に預けたのだ。橋本からさらにパスが出て、星がミドルシュートを沈めたのだが、小見はどうして「打たないという選択」を下したのだろうか。
「あの試合の前にも(松橋力蔵)監督から言われたんですけど、仕掛けるときには顔を上げていくつか選択肢を持つようにと。あのときのように、顔を上げて選択肢を一つ二つと持った上で仕掛けられるのは成長した部分ですね」
打つのか打たないのか。その識別する目が養われてきた手応えがある。
「自分でも成長を実感しながらプレーしていますし、できることがものすごく増えているということは感じています」
打つ小見洋太と打たない小見洋太。クラブ史上初の決勝進出を決めた2試合で見せた二つの顔は、若きアタッカーの成長の証である。