J1で首位を快走する川崎フロンターレは、ジュニア年代のスカウトにも力を入れている。より優秀な才能を発掘するためにリモートでのスカウト活動『F活』もスタートした。その内容について、育成部長の山岸繁氏、アカデミー専門スカウトの大田和直哉氏に話を聞いた。

上写真=川崎フロンターレでは現在、アカデミー組織としてジュニア年代のU-12・10のカテゴリーを保有している(写真提供◎川崎フロンターレ)

取材◎杉園昌之

一人でも多くの才能と出会うために

 いまやジュニア年代からのスカウト活動は当たり前だ。Jクラブはどこも積極的に活動中で、川崎フロンターレも神奈川県内を中心に将来性豊かな選手を数多く発掘してきた。そして、今年6月末からはより細かな地域にスカウト網を広げ、より多くの選手に目が行き届くように『リモートスカウト活動~F活』に取り組んでいる。

 F活とは、端的に言えば、サッカー少年にプレーの動画を送ってもらい、それをスカウト陣がチェックするというものだ。

 サッカーを心から楽しみ(Fun)、将来(For the future)、川崎フロンターレ戦士になる事を目標に励んでいる、その様な可能性を秘めた(Frontier) 選手を発掘すべく、応募動画の中からリモートで行なうスカウト活動が「F活」だ。

 今回の募集は、川崎フロンターレエリートクラス活動(週1度の特別スクール)に通うことができる現小学5年生が対象(募集期間は~2020年8月31日まで)。応募要項を見ると、提出物は最大5分の自己紹介を入れたアピール動画と20分未満の試合動画になる。

 動画の投稿は、スマートフォン1台で簡単にアップロードできる。小学生から届く映像を多数、確認しているアカデミー専門の大田和スカウトが、近年の傾向やチェックしているポイントを明かしてくれた。

「10年前に比べると、技術を教えてくれるスクールなども充実していて、最近の小学生たちはみんなうまいです。正直、スカウトとしては、技術の部分はそこまで重要視していません。むしろ、テクニックは後から身につきます。それよりも、何か特徴を持った選手に目がいきますね。例えば、すごく足が速いとか、体が大きいとか、ピッチでリーダーシップを発揮できるとか。型にはめないで見ています」

 今回、リモートでの活動に踏み切ったのは、コロナ禍の影響で小中学生の大会の延期や中止が相次ぎ、例年のようなスカウト活動ができないという事情もある。大田和スカウトは公式戦がない中でも東京都内、神奈川県内の練習試合に足を運んでいるが、やはりすべてをカバーすることは難しいという。

「これまでは強豪と言われるチームを中心に見ていました。招待大会などを視察し、同じレベルのチームをチェックしていました。ただ、そこに参加していなかったり、主要な大会で早く負けたりするチームまでは目が行き届いていなかったのが実情です。その中にも、可能性を持った選手はいたと思うのですが……。

 以前、こんなことがありました。お目当ての選手が出場する試合の次に組まれていたゲームで偶然面白い選手を見つけ、フロンターレの練習に参加してもらったんです。結果的にその選手はエリートクラスに入り、ジュニアユースまで進みました。今回のリモートスカウト活動も、そういった選手たちを発掘できればいいなと思っています。これまで発見できなかったような選手たちに出会いたいと思っています」

 川崎フロンターレでは現在、アカデミー組織としてジュニア年代のU-12・10のカテゴリーを保有し、川崎市地域を中心に優秀な選手を集め、将来、フロンターレのトップチームで活躍できる選手の育成に努めている。ただし、このU-12・10のカテゴリーは、各学年で加入できる人数が限られており、可能性を持った選手すべてを受け入れることができない状況もある。このような状況を改善すべく、2013年度より川崎フロンターレ「エリートクラス」を設立。川崎フロンターレU-15での合流を目指し、地域の方々とともに選手育成を行なっているのだ。

 F活で一定の評価を得た選手については、エリートクラスへの練習参加など、その可能性を発揮する機会を設けていく。また、練習参加の際には、所属チームの指導者の方にしっかり連絡を取ることになっている。

競技面だけではなく人間性も大切

画像: 山岸繁育成部長(右)と大田和直哉スカウト担当(写真◎サッカーマガジン)

山岸繁育成部長(右)と大田和直哉スカウト担当(写真◎サッカーマガジン)

 コロナ禍という特殊な状況下にスタートしたリモートスカウト活動は今回限りの試みではなく、今後も続けていく予定だ。また、動画は同じ選手が何度投稿しても問題ない。山岸育成部長に、その狙いを聞いた。

「これはセレクションではありません。受かった、落ちたではない。例えば、3年生でこちらの目に留まらなくても、1年後の4年生でまた投稿してもらえればいい。そのときに成長していれば、スカウトが直接見に行きます。ですから、何度でもチャレンジしてください」

 フロンターレのエリートクラスに入るのは簡単ではない。現在、U-10、U-11、U-12いずれも10数名と少ない人数で活動している。倍率は高く、狭き門と言えるが、それは少人数制をとり、ジュニアユース、ジュニアの指導者たちがきっちり指導するスタイルにこだわりを持っているからでもある。2013年に創設されて、毎年のようにジュニアユースに人材を送り込んでおり、成果は上々だ。

 エリートクラスの母体となるアカデミー組織の育成も充実している。近年は小学生から一貫して育ててきた人材がトップチームでも花開きつつある。田中碧、三笘薫、宮代大聖らは、いずれもジュニア年代から育ってきたタレントである。山岸育成部長は、現状に満足せずにさらなる底上げを誓う。

「現在、トップで活躍する選手たちはいますが、もっと数を増やしていきたい。アカデミー全体のレベルを上げていかないといけないので、リモートスカウト活動も始めました。アカデミーでは、トップと同じスタイルを目指し、一貫した指導をしています。それがいい選手を育ててる上では大事です」

 育成の指針も明確である。

「"FOOTBALL TOGETHER~川崎とともに~"という理念を掲げています。選手を育成していく上で競技面だけではなく、人間形成も大事です。学業もおろそかにしないように指導しています。そして、地域にも貢献していけるような人材育成を目指しています」(山岸育成部長)

 だからこそ、アカデミー部門に選手を迎える段階から人間性も重視しているのだ。リモートスカウト活動でも、あえて自己PR動画の送付をお願いしている。

「小学生であっても、自分の意見をしっかり伝えることは大事です。受け応えがちゃんとできる子どもは、サッカーでも伸びていきます」

 スカウト活動にも妥協はない。有能な人材を集め、確固たる信念のもとに育てられてきたのが、現在トップで活躍する"生え抜き"たちである。

■募集要項

【対象・参加資格】川崎フロンターレエリートクラス活動に通うことができる範囲にお住いの現小学5年生(2009年4月2日~2010年4月1日生まれ)
【募集期間】2020年8月31日(月)23:59まで
【提出動画について】フィールドプレーヤー・ゴールキーパー共に動画は2種類投稿。
【アピール動画】必ず動画の最初に自己紹介を入れた最大5分までの1つの動画
【試合動画】①20分未満の試合動画を最大4つまで可能 ②できる限り編集されていない動画が望ましい。
※2020年内に撮影した映像を使用のこと。※動画アップロード方法は、登録したメールアドレスへ連絡される。動画共有サービスの使用などではなく、スマートフォンで簡単にアップロードできる形式。

【申込方法】専用フォーム

【詳細】公式HP


This article is a sponsored article by
''.