上写真=Jリーグ2クラブ目でデビューを飾った寺沢。次のチャンスに向けて日々の練習に励んでいる(写真◎石倉利英)
「後ろを振り返っても何も起こらない」
加入1年目の今季、明治安田J3リーグで開幕から控えメンバー入りを続け、3月30日の第7節・福島ユナイテッドFC戦で先発出場。シーズン中のメンバー変更が少ないGKゆえに「年間を通して1回あるかどうか、というくらいのチャンス」をつかみ、Jリーグデビュー戦に臨んだ。
開幕からフル出場していたGK高麗稜太の欠場に伴うスタメンだったが、第2GKとして「いつも良い準備をしていた」という。「緊張は一切なく試合に入ることができて、違和感もなかった」ものの、0-3で敗れて「チャンスを物にできなかったという悔しさでいっぱい」の一戦となった。
最初の失点は33分。CKを相手選手がフリックした浮き球をパンチングしようと前に出たが、目の前にいたDF永野修都と相手選手との接触もあり、ボールに触ることができなかった。その後の混戦から蹴り込まれ、「前に出るという判断は間違っていなかったと思う。ブロックなど難しい状況もありましたが、出ると言って前に出たので、修都と相手に馬乗りになってでもボールに行っていれば、触ることはできていたと思う」と反省点を口にした。
長野県出身で、地元の都市大塩尻高から関東学院大に進み、卒業後はドイツに渡って6部相当のリーグのクラブでプレー。2019年の帰国後は当時JFLの奈良クラブ、当時九州リーグの沖縄SVを経て、21年はAC長野パルセイロに加入して初のJクラブ挑戦となったが、リーグ戦の出場機会はなかった。
翌22年から関東1部リーグやJFLのクラブを経て、今季2回目の挑戦でJリーグデビューを果たした。だが前述の先制点を機に41分にPKで追加点、76分には3点目を奪われて悔しい結果となり、次の試合となった前節はメンバー外に。今度は第3GKからの巻き返しを期しているが、落ち込んではいない。
「たぶん職業を問わず、何事もそうですが、後ろを振り返っても何も起こらないので、もう次に切り替えています。中学1年生のときにJリーグのピッチに立ちたいと思ってから、20年後だったんですよ。20年間、本当にいろいろありましたが、ゼロから1にした新しい景色は、自分にとって大きかったので」
新しい課題も見つかり、「悲観する必要はないと思っています。希望に満ちあふれている部分もあるので、続けてやっていくだけ」ときっぱり。1を2にするための挑戦は、すでに始まっている。
取材・写真◎石倉利英