上写真=鳥取加入後、初めて公式戦に出場した福留(写真◎石倉利英)
「前を向いてやっていきたい」
鳥取県大山町出身の福留は、境高から関西大に進み、大学卒業後はドイツに渡って下部リーグでプレー。水戸ホーリーホック、アスルクラロ沼津を経て、2020年にアルビレックス新潟シンガポールから鳥取に完全移籍したが、昨季までの2年間でリーグ戦と天皇杯での出場機会はなかった。
今季もリーグ戦では出場機会がないが、中国リーグ所属のYonago Genki SCと対戦する天皇杯の鳥取県代表決定戦で先発の機会を得た。待望の鳥取デビュー戦だったものの、「特別に何かしようということはなく、普段のトレーニングから試合に出るために取り組んでいるので、いま自分が持っているものを90分間ピッチで示すことに集中して試合に向かった」という。
ジャイアントキリングを狙う相手は開始から勢い良く攻め込み、ほどなく最初のシュートを放ったが、しっかり正面でキャッチ。早い時間にボールに触って落ち着いたかと思いきや、「前がかりに、点を取ってやるという意思を示して攻撃してきていた。一瞬でもスキを与えると、この試合は難しくなるという状況だったので、安心することもなく、より集中力を高めなければいけないという感覚だった」と振り返る。その後も前半は際どいシュートを打たれる場面があったが、確実にセーブして失点を防いだ。
鳥取は前半を2-0で折り返すと、後半にも3点を追加。福留は足でつなぐパスのミスでピンチを招いた場面もありながら、無失点に抑えて5-0の完封勝利に貢献した。「ゴールを許さないことだけは、絶対に達成しなければいけないと思っていた。前半に失点せず、無失点で折り返すことができたのは大きかったと思う」と語った背番号1は、「もちろん全体的に見て、もっとプレーの質を上げなければいけないし、もっと自分の力を出さなければいけない。ここから次に向けて、練習からしっかり取り組んでいきたい」と課題も口にしている。
地元のプロクラブで初めてプレーし、あらためて「出場するかしないかは、とても大きい。サッカー選手は試合でプレーすることが、何より自分の価値を示すことであると思う」と感じたという。鳥取でのデビュー戦を勝利で飾り、「まずは勝つこと。そして失点を許さないこと。それを結果として出せたことは、すごくポジティブなことだった」と納得の表情を浮かべた。
もちろん、デビューしただけで満足するわけにはいかない。田尻健、糸原紘史郎とのポジション争いに勝ち、リーグ戦でも出場機会を得て、鳥取の勝利に貢献するのが次の目標だ。「もう今日は終わったので」と強調した福留は、「これから、どういうふうに自分自身が取り組んでいくか、それをどうチームの力にして、結果につなげていくのか。そこにフォーカスして、前を向いてやっていきたい」と力強く語り、さらなる進化を期していた。
取材・写真◎石倉利英