上写真=少しずつ色が変わるLED照明によるライトアップや噴水、光るウォーターバルーンなどで彩られた『夜宴スタジアム』(写真◎石倉利英)
「全く違う場所のよう」
日が暮れて少しずつ暗くなっていくスタジアムが、優しい音楽の音色とともに、色鮮やかな光で彩られた。鳥取県米子市のチュウブYAJINスタジアム(チュスタ)で行なわれた内覧会には、同市の伊木隆司市長をはじめ、関係企業や地元メディアの関係者が出席。YAJINスタジアムが、日没とともに夜宴(YAEN)スタジアムに生まれ変わるという、クラブの新しいプロジェクトのスタートに立ち会った。
個人や地元企業からの協賛金を財源に、2012年12月に完成したチュスタは、ガイナーレの練習拠点であり、J3リーグも年に数試合を開催している。Jクラブのホームスタジアムは地元の自治体が所有しているケースがほとんどだが、チュスタはガイナーレが所有しており、チーム強化のベースであると同時に、地域住民の憩いの場として整備する計画が進められてきた。
コロナ禍の現在は、以前のように人が集まるイベントなどが困難になっているが、スタジアムという『広大な芝生広場』を活用すれば、新しい生活様式に沿った、密を避けた新しい場を作ることができる。計画を進める中で、そう考えたガイナーレが、米子市新規ビジネスモデル創造支援補助金(新型コロナウイルス感染症の影響下・収束後でも持続可能で、新規の需要を開拓し、広く市内の他の事業者への事業効果の波及が期待できる新規ビジネスの立ち上げを、米子市が支援する補助金)を活用して立ち上げたプロジェクトが『夜宴スタジアム』だ。
バックスタンド後方にある樹木を、少しずつ色が変わるLED照明でライトアップし、ホーム側ゴール裏スタンドの照明と連動させて、そこに噴水を設置。ポンプの電気代だけでくみ上げることができる地下水を放出し、美しいアトラクションに仕立て上げた。
そのホーム側ゴール裏スタンド上にある天然芝部分が、整備されてフリースペースとなっており、星空をながめながら、のんびり過ごすことができる。このスペースはキッチンカーなども乗り入れることができ、手洗い場も設置してあるため、飲食イベントが可能。ピッチ上には光るウォーターバルーンが置いてあり、子どもはピッチ内に入って遊ぶことができる。
『夜宴スタジアム』はまだ完成したわけではなく、今後は用具を貸し出してバーベキューを楽しめるエリアなどの整備が予定されている。また前述の通り、新規需要の開拓と、他の事業者への事業効果の波及も目的の一つで、米子市をはじめとする各自治体や、各業界と連携しながら発展させていくことを目指している。
チュスタで開催されたJリーグの試合を観戦したことがある伊木市長は「サッカースタジアムが、いままでと違う趣きで、全く違う場所のように感じられた」と驚いた様子。「昼間は試合を楽しませてもらっている場所ですが、夜にライトアップすることで、いろいろな使い方ができるのではないか。スタジアムの可能性を感じました。新しい米子のスポットとして育っていけば」と今後に期待を寄せていた。
小高い丘のような場所にあるチュスタは視界をさえぎるものが少なく、他の光も入ってこないため、夕方はきれいな夕陽や大山(だいせん)の眺め、夜はきれいな星空を眺めることができる。サッカークラブ、サッカー専用スタジアムの非稼働時間を利活用する事業として、これから注目を集めそうだ。
5月中はプレオープン期間とし、5月21日(金)から29日(土)までの水曜日、金曜日、土曜日に営業し、営業時間は18時30分から21時。入場料は大人500円、小・中学生は250円、園児・乳幼児は無料で、200台が停められる無料の駐車スペースが用意されている。6月以降の営業日や営業時間は、『夜宴スタジアム』公式ホームページのカレンダーに掲載される。
『夜宴スタジアム』公式ホームページ
https://www.gainare.co.jp/yaen/
取材・写真◎石倉利英