上写真=Jリーグデビューを果たし、さらなる成長を目指して練習に励む坂本(写真◎石倉利英)
1分間のデビュー戦
7月15日、J3リーグ第4節で鹿児島ユナイテッドFCと対戦したガイナーレ鳥取は、2-1とリードして試合終了間際を迎えた。5分と表示された後半のアディショナルタイムも93分を過ぎたとき(公式記録では90+4分)、DF坂本敬がピッチに送り込まれる。これがJリーグデビュー戦だった。
登録ポジションはDFだが、2シャドーの一角に入り、髙木理己監督には「とにかくボールを追うこと、前からプレスに行くこと、前を向いたらシュートを狙っていけ、と言われて」送り出された。敵地で逃げ切りを狙う、しびれる状況で「硬くなり過ぎず、いい感じで緊張感があった」と振り返る。
だが94分50秒、まさに終了寸前に大ピンチが。左サイドから攻め込まれ、坂本も下がって対応したが、ボールホルダーと、後方から追い越していく相手選手への対応で、DF石井光輝との連係が乱れた。
「『自分が(追い越していく選手に)ついていく』と声を掛けていたのですが、うまくいきませんでした。光輝さんは疲れている時間帯だったので、自分が出ていけばよかった」。結果的にボールホルダーにフリーでセンタリングを上げられ、ニアサイドからヘディングシュートを打たれてしまう。しかしGK田尻健のセーブで事なきを得て、そのまま1-0で勝利のホイッスルを聞いた。
地元の鳥取県出身で、SC鳥取プエデU-15からガイナーレ鳥取U-18に進み、今季トップチームに昇格した。プロデビュー戦は公式記録で1分間、実測で約2分間のプレーで、ボールに触ったのは一度だけ。それでも大きな一歩となったのは間違いない。
志垣良ヘッドコーチとの居残りで技術面の練習を重ねたり、効率の良い動き方を学びながら、プロ1年目のシーズンを過ごしている。「正確につないで出ていくなど、ボールをつなぐプレーはレベルアップしなければいけない。前に出ていくのが自分の強みなので、しっかりつないで出ていくようにするのが課題」と認識しており、短時間とはいえプロのピッチに立ったことで、求められるレベルも明確になっていくだろう。
四日市中央工高(三重)から加入した同い年のFW田口裕也は、開幕戦で決勝ゴールを挙げるなど、第5節まで全試合に出場して2得点を決めており、「かなり刺激になっている」という。翻って自身は、デビュー戦以外の4試合はベンチ外だが、「今季はこういう状況なので、チャンスは絶対来ると思う。そのためにできることをやりたい。ベンチ外だからといって落ち込んだりはしないですし、次のチャンスに向けて前向きにやっている」と力強い。
スポーツ分野の特別選抜枠を設けている早稲田大の人間科学部eスクールで、健康福祉科学科に合格し、通信課程での学位取得にも取り組んでいる。オフの日などにオンラインで講義を受け、プロ選手との両立も「順調です」ときっぱり。ピッチ内外で学びながら、次の一歩への挑戦が続く。
現地取材・写真◎石倉利英