昨年度の天皇杯王者ヴァンフォーレ甲府は今季、富士フイルムスーパーカップ、J2リーグの3試合を戦って2分2敗といまだ勝利を手にしていない。5日の東京ヴェルディ戦(J2第3節)もドローに終わった。ただ、勝ち星には見放されているものの、チームは大きなポテンシャルを感じさせている。

上写真=東京V戦では途中までサイドでプレーした甲府の長谷川元希(写真◎J.LEAGUE)

最適解を導き、成熟度を高めれば…

 J2第3節で東京ヴェルディとヴァンフォーレ甲府が対戦、両チーム得点なく、0-0で引き分けた。決定機と呼べるシーンは数少なく、シュートも東京Vが5本、甲府が4本と、ゴール前の攻防はあまり見られない、文字にすれば見どころの乏しい試合のように映る。数字が示す通り攻撃の最後の局面でのアイディアや勇気が足りない面はあったものの、両チームともしっかりボールを動かしてチャンスをうかがい、球際では厳しい争いが繰り広げられた。締まったゲームが展開され、それぞれのプレーに見ごたえはあった。

 中でも今季天皇杯優勝チームとしてアジアチャンピオンズリーグ(ACL)にも臨む甲府には可能性を感じた。もちろん、ここまで富士フイルムスーパーカップも含めて4試合勝利がないことは問題だが、プレーの精度が高まれば面白くなると思わせた。

 前節、佐藤和也が右ひざ内側側副靱帯を損傷し、全治まで6週間から8週間かかる見込みとなった。そのため、この日ボランチでコンビを組んだのは、開幕から先発を続けている21歳の松本凪生と23歳の品田愛斗だった。松本凪の運動量とボール奪取能力、品田の正確なキックからの展開力がかみ合わさったときには良い攻撃を見せており、2人は楽しみな存在と映った。試合後に篠田善之監督が指摘していたように、品田の判断の遅さ、松本凪の奪った後のパスの精度」など、高めなければならない点はあるものの、ともに若く可能性を感じさせた。それぞれFC東京、セレッソ大阪の育成組織時代には年代別代表にも選ばれ、早くから将来を嘱望されてきた。2人の成長によって甲府の中盤はより安定し、層も厚くなるはずだ。

 39歳ながら衰え知らずのピーター・ウタカが4年ぶりに復帰し、前線には起点ができる。その周りを精力的に動く三平和司との組み合わせも面白い。ともに得点感覚にも優れており、チャンスが増えれば自ずと得点も増えるだろう。ただし、「コンディションが良く、調子が上がっていた」(篠田監督)三平が出場したことで、今季のチームでは4―2―3―1のトップ下を務めてきた長谷川元希が左に回り、この日はあまりボールに絡むことができなかったことは気になった。本来サイドでも攻撃に変化をつけることができる選手であり、チームとしてもっとボールを預ける意識が必要だっただろう。

 ただ、長谷川の持つアイディアと技術は真ん中でより生かされるとも考える。後半途中で三平に代わって鳥海芳樹が出場し、長谷川を中央に戻した直後のプレーでは、鳥海のドリブルからウタカに当て、その落としたを長谷川がシュートして東京Vゴールを脅かした。素早い展開からチャンスを生み出している。

 サイドにはドリブルの鋭い鳥海やスピードのあるルーキーの水野颯太、勘の良い動き出しとゴールへの意欲が強い宮崎純真らもおり、彼らを生かす布陣やバランスを見いだす必要もあるだろう。この日は両サイドに長谷川と武富孝介と周りを生かすことのできる選手を配したこともあり、彼らを追い越す右の須貝英大のタイミングの良い攻撃参加、左の小林岩魚のダイナミックな攻め上がりが効果的だった。

 多彩な攻撃を実現するポテンシャルは間違いなくある。あとはチームのベースを固めつつ、状況や選手のコンディションに応じてベストの組み合わせを見いだせるかどうかだろう。カギを握るのは監督の手腕だ。9月にはACL本戦にも臨む。それまでに成熟度を高め、日本を代表するクラブの一つとしてアジアで勇敢に戦う姿が見たい。

取材◎国吉好弘


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