J2リーグが開幕し、 黒田剛監督が率いるFC町田ゼルビアは、ホームでベガルタ仙台との開幕戦に臨んだ。高校サッカー界で名将として知られた指揮官はプロ初陣で「勝つため」に取り組んできたという「守備強化」の成果を示した。

上写真=選手に指示を送る町田の黒田剛監督(写真◎J.LEAGUE)

相手に決定的な形を許さず

 高校サッカーからプロの監督に転身した黒田剛監督が率いるFC町田ゼルビアが、ホームにベガルタ仙台を迎えてJ2リーグ新シーズンの第1戦に臨んだ。黒田監督は青森山田高校のサッカー部の監督としてチームを全国的な強豪に成長させ、ここ10年間で3回の全国高校選手権優勝、Jクラブの下部組織とも競うJFAプレミアリーグEASTでも3回優勝を果たしている。その中から柴崎岳(レガネス)、松木玖生(FC東京)らを育てるなど数々の実績を残してきた。その指導力とチームづくりの手腕に目を付けた町田が、プロの監督として招へいすることなった。

 新体制でJ1昇格を目指す町田はオフに大型補強を実施し、オーストラリア代表でカタール・ワールドカップにも出場したミッチェル・デュークや2019年の横浜F・マリノスのJ1優勝に貢献したエリキなど、19人の新戦力を加えて黒田監督のチームづくりをサポートしている。

 一方この日の対戦相手であるベガルタ仙台も、昨年、1年でのJ1復帰を逃し、今年こその昇格の思いは強い。積極的な補強で昨季途中から就任した伊藤彰監督のもと、J2を制するにふさわしい陣容を整えた。この日の開幕戦は、両チームにとって新シーズンを占う重要な試合だった。

 立ち上がり、町田が前線から激しいプレスしかけてペースをつかんだが、試合巧者の仙台が徐々に盛り返し積極的なミドルシュートで主導権を奪った。それでも30分を過ぎたころから町田は右の平河悠、左のエリキのスピードを生かしてチャンスを作り、エリキが抜け出してシュートをバーに当て、右サイドのつなぎからデュークが意表を突いたシュートを放つが、これもバーに嫌われた。

 0-0で迎えた後半は「もう少しボールを握りたいとオーガナイズも少し変えて」(伊藤監督)臨んだ仙台が再びペースをつかんで押し込むが、ホ・ヨンジュンのシュートはGKポープ・ウィリアムが好セーブで阻み、氣田亮真、中島元彦のミドルシュートは枠を外れてスコアは動かない。試合は次第に膠着し、両監督とも交代選手を投入して流れを引き寄せようとするが、ともに守備の意識、集中は途切れず0-0のままタイムアップとなった。

 初陣をスコアレスドローで終えた黒田監督は「キャンプから落とし込んできた守備の部分を発揮して、カウンターあるいは、クロスからチャンスを作ることをどれぐらい出せるか」がポイントだったとし、「サイドからはチャンスを作れましたし、決定機が4、5本あったが、決め切れなかったことは課題」と話した。ただ、「全般的に仙台さんのクロス攻撃や背後を突く形はほぼ阻止できていたかなと。相手に決定的なチャンスを作られていないことは守備を強化してきた成果だと思います。流れの中で失点をせずに、勝ち点1を取れたことをポジティブに捉えて、次の群馬戦に臨みたい」と振り返った。

 プロのチームづくりに当たって黒田監督は「勝つチームをつくる」と目標を掲げ、そのためには「勝つ、イコール、守れる」ことから取り組んだ。その成果が、早速この試合で出たと言えるだろう。そのチームづくりの根本は青森山田時代と変わりはない。

 プロの監督としてのスタートは、まずまず及第点だが、プロの選手を相手にしたマネジメントの本番はこれから。素直で純粋な高校生の指導とは異なる部分も当然あるだろう。ただ、その違いについては黒田監督自身は百も承知のはずだ。新監督の手腕も含め、今シーズンの町田には注目する価値がある。

取材◎国吉好弘


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