上写真＝東京Vが染野唯月の決勝ゴールでプレーオフ進出の可能性をつないだ（写真◎J.LEAGUE）
■2022年10月15日 J2リーグ第41節（味スタ/12,846人）
東京V 1-0 新潟
得点者：（東）染野唯月
「自信と過信は紙一重」と松橋監督
ブーイング。拍手。ブーイング。拍手。
前半の途中で新潟が低い位置でボールを動かして東京ヴェルディを自陣に引き込もうとすると、東京Vのサポーターがブーイング。アルビレックス新潟のサポーターは拍手でそれをかき消す。しばらくはそれが続いた。つまり、前半は比較的静かだった。
勝てばJ2優勝が決まる新潟に対し、プレーオフ進出をあきらめないホームの東京Vは、開始6分に右サイドからバスケス・バイロンが快足を生かしてカットインから狙い、41分には馬場晴也が強烈なミドルシュートで襲いかかるなど攻めたが、GK小島亨介が立ちはだかった。
新潟は得意の左サイドの崩しを中心にゴールに迫り、23分には堀米悠斗のクロスを逆サイドでフリーで入ってきた三戸舜介がダイレクトボレーで狙ったが、ゴール右へ。前半の決定機はこのぐらいだったが、後半は開始から一気にテンポを上げた。
48分に伊藤涼太郎のドリブル突破から最後は短くスルーパス、三戸が至近距離から狙ったがDFにブロックされた。54分には左を崩して三戸がクロス、逆サイドから入ってきた藤原奏哉のヘディングシュートはしかし、GKマテウスの右足に弾かれた。
2つのビッグチャンスでスタジアムが沸いたあとの58分、ようやくスコアが動いた。決めたのは東京V。左CKから混戦になって最後は染野唯月が蹴り込んで、先制に成功した。
65分に堀米のきれいなスルーパスに小見洋太が抜け出してGKと1対1になるが、シュートを焦ったか右足で狙ったボールは大きく枠を超えていった。この日の最大のチャンスの一つを失うことで、試合はさらに難しくなった。このあとも新潟は攻めながらも、ゴールはなし。この試合での優勝決着を逃すことになった。
「ともに90分、集中したタフな試合でした」と松橋力蔵監督。優勝を決められなかった悔しさというよりは、「質の部分でちょっと焦りが出たような感じがした」とディテールについて振り返ったのは、前節で昇格を決めたからでもあるだろうが、この監督らしさといえる。
昇格を決めたあと、勝てば優勝のゲームだったが、「自信と過信は紙一重。そこにもう一度目を向けようと話しました」が選手に語った言葉。「次節はホームで何とかみんなで力を合わせて、勝ち点3を取れるように頑張りたいと思います」。10月16日に横浜FCが負ければ優勝が決まるが、引き分け以上だった場合でも、次の最終節も新潟は勝てばJ2優勝という条件。チャンスはもう一度、巡ってくる。
東京Vはこれで5連勝。プレーオフ進出への可能性をつなぐ結果になったが、城福浩監督は「まだまだ足りない」と引き締める。
「ボールにアタックしようと話していて、そうなると必然的にラインが上がるので、その2つを同時にやろうと言ってきました。まだ足りないけれど、だいぶみんなの頭に刻み込まれてきたかな」と守備の激しさには及第点。
「ずっと攻められていたら守る体力がなくなりますが、自分たちが押し込む時間があったからこそ、エネルギーが余って冷静な判断ができることになりました。後半途中で自分たちの時間を作れたことが、最後に集中力を保てた要因で、ラインを上げてコンパクトにしてボールにいく、というサイクルは、確かに押し込まれていたにしても、全員で共通認識を持つことができました」
攻撃でテンポを作ったからこそ、最後まで守ることができた。その好リズムが1-0の粘り強い勝利を導いた。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
