上写真=新潟が苦しみながらも逃げ切って、前半戦を首位で終えた(写真◎J.LEAGUE)
■2022年6月11日 J2リーグ第21節(昭和電ド/6,526人)
大分 1-2 新潟
得点者:(大)長沢駿
(新)高木善朗2
「同点、逆転までいける雰囲気」と下平監督
「本当に選手が非常にたくましく見えて、素晴らしい試合をしてくれました」
いつもは冷静沈着なアルビレックス新潟の松橋力蔵監督も、試合直後の言葉には興奮がにじみ出た。アウェーで大分トリニータに2-1。しかも、後半は大分の猛攻にさらされて、耐えて耐えて逃げ切っただけに、選手もスタッフも感情の高ぶりを隠さなかった。
J2の前半戦最後となる第21節。上位3チームが勝ち点39で並ぶなど、混戦模様は続いているが、アウェー連戦となる新潟は前節は徳島ヴォルティスに引き分けており、勝利が欲しかった一戦。もちろん大分も同様で、勝てば新潟との勝ち点差を8にまで縮めることができるだけに、必勝体制で臨んだ。
ともに論理的にボールを動かす狙いを持つチームだが、前半に上回ったのは新潟の方。序盤こそ大分の強烈なプレスに手を焼いたものの、時間とともにペースを握るいつもの展開になった。22分には早々に先制点。中盤で鈴木孝司が受けてターン、裏のスペースに流し込むと、高木善朗が抜け出してそのままGK高木駿を破ってゴール右に流し込んだ。
大分の下平隆宏監督が「今日のハイライトになった」と悔やんだのは、後半開始早々の47分のシーン。新潟は本間至恩が右に展開、松田詠太郎が中央に送ると、ファーに流れた高木がシュート、これが大分の上夷克典に当たってコースが変わり、吸い込まれるようにゴール右ポストの内側に当たって転がり込んだ。新潟が2点のリードだ。
下平監督がそう話したのは、「あれがなければ同点、逆転までいける雰囲気だった。もったいなかった」からだ。確かにここから試合の様相は一変、2点のビハインドを追いかける大分が攻めに攻めた。
リズムをつかんだのは前への意欲はもちろんのこと、3バックの右の上夷、左の三竿雄斗の存在が大きい。前半からウイングバックの右の井上健太、左の藤本一輝がスピードを生かして攻めに出たが、そこに上夷と三竿が積極的にサポートに入ることで攻撃に厚みが出た。
すると73分、大分に追撃の1点が生まれる。右サイド深くから攻め、中央を経由して左に展開すると、松本怜がインスイングのクロス、これに飛び込んだ長沢駿が得意のヘッドでゴール右に押し込んだ。64分に一緒にピッチに入った2人が大きな仕事をやってのけた。
次の1点を巡って、争いはどんどん激しくなっていく。主役は引き続き大分で、80分に井上の右からのカットインからスルーパスを受けた渡邉新太が、90+3分に左CKからつないで上夷がゴールネットを揺らしたが、どちらもオフサイドがあってゴールならず。
下平監督は「選手が果敢に戦ってくれたことを称えたい」としながらも、わずか1点が届かなかった。チャンスは作るものの、押し込んでからの勝負のパスに乱れが多く、そこが新潟との違いになったかもしれない。
なんとか逃げ切って勝ち点3をもぎ取った新潟は、ここ5試合で4勝1分けとして前半戦を首位で終了。同勝ち点で上位を争うベガルタ仙台と横浜FCがともに引き分けたため、2ポイント前に出た。松橋監督は「一戦一戦進化して、成長して、チャレンジして、一つでも、というか、これ以上に強いチームになりたい」とさらに言葉に力を込めた。