上写真=千葉が先制し東京Vが追いつく。ともに譲らずにドローで終えた(写真◎J.LEAGUE)
■2022年4月23日 J2リーグ第11節(味スタ/5,110人)
東京V 1-1 千葉
得点者:(東)佐藤凌我
(千)高木俊幸
高木俊幸が自身初の「恩返し弾」
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、両チームともにがっくりと膝をつく選手があちこちに。公式記録では24.8℃という暑さの中で戦った90分で、ともに最後までゴールを狙ったが、1-1のドローに終わった。
ボールを動かすのが得意な東京V、それを引っ掛けてカウンターを狙いたい千葉。だが、前半はその逆のパターンも。千葉が回しながら機会をうかがい、東京Vが奪って入れ替わっては出ていく。ただ、どちらも勝負のパスで乱れが出て、ゴール前のシーンは少ない。
決定機はそれぞれ1回だが、これはともに持ち味を発揮して生まれた。千葉は24分、見木友哉が相手のボールにアタックして相手陣内に入ったあたりで奪い、そのままドリブル。GK高木和徹との1対1に持ち込んだものの、右を狙うと見せかけて左に放ったシュートは枠を外してしまった。
東京Vは37分、高い位置で相手から奪うと、梶川諒太が狭いエリアを通す絶妙のショートパス。これを受けた佐藤凌我が右足で狙うが、わずかに右に切れていく。
少ないチャンスを先にゴールに結びつけたのは、アウェーの千葉だった。52分、自陣右から福満隆貴が櫻川ソロモンに斜めに渡すとワンタッチで裏へ、抜け出したのは高木俊幸だった。そのままゴールに向かって運ぶと、冷静にGKを見て決めきった。東京Vのアカデミー育ちのアタッカーが、自身初の「恩返し弾」で先制だ。
1点を追う東京Vは積極的な選手交代に活路を見出す。特に森田晃樹、バスケス・バイロン、阿野真拓、杉本竜士と攻撃に特徴のある選手がピッチに入って迫力を出した。すると81分、馬場晴也の攻め上がりからパスを受けた杉本がワンタッチで優しく前線へ入れると、佐藤が前向きでもらってそのまま持ち出し、左足でフィニッシュ。GK新井章太を破って、3試合連続ゴールでついに同点とした。
ここからはもう1点を狙って、東京Vが一方的に攻め立てる。89分には左からの杉本のセンタリングに佐藤がヘッドで狙うが、惜しくも左ポスト直撃。結局、このまま1-1で終了して、ともに5連戦の最初のゲームは痛み分けとなった。
千葉の尹晶煥監督は逃げ切れなかった理由を「奪ってからのミス」に求めた。「奪ったあとにいい攻撃をしなければいけないが、それができずにカウンターに出ることができず、また奪われて守備陣が前に出ることができなかった」と、切り替えのミスで足が動かなくなる悪循環を悔やんだ。それでも、前節は大宮アルディージャに敗れていただけに、連敗は避けることができた。
東京Vは試合前日に堀孝史監督が新型コロナウイルスの陽性判定を受けたため、代わって指揮を執った長島裕明コーチは「なんとしても勝ちたかった」。ただ、先制された中でも梶川諒太は「セカンドボールを回収して動かせれば相手は疲れるし、失点しても顔を下げずにやれればと思う中での同点ゴールで、相手のズレからの得点になりました」と、焦れない戦いを自賛した。長島コーチも「選手たちがこういうときこそまとまりが大事ということで、チームをまとめてくれた」と、監督不在の中で一体感を武器に、連敗を2で止めてもぎ取った勝ち点1になった。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE