高知キャンプを一時休止していたアルビレックス新潟が、1月29日からようやく練習を再開させている。チーム内に新型ウイルスのクラスターが発生する難しいスタートで、10日に渡って練習できなかった。しかし松橋力蔵監督は、選手たちの意欲を見て改めて引き締まる思いなのだった。

上写真=松橋力蔵監督は練習再開を喜び、与えられた時間で全力を尽くすことを誓った(写真提供◎アルビレックス新潟)

「僕の中にしっかりした価値観や信念がなければ」

「やっぱりボールなんだな、と」

 アルビレックス新潟の選手たちは、真っ先にボールのところに駆け寄ったのだという。松橋力蔵監督はその光景を思い出したように微笑んだ。

「普段ならストレッチをしたり、準備してからになりますけど、みんながまずボールを触りにいきました。自然のことだなと思います」

 高知キャンプ中に新型ウイルスのクラスターが発生し、クラブは1月19日からの活動休止を決断した。29日午後からようやく再開し、選手たちも順次復帰。2月8日から大阪に移動して行う予定だった2次キャンプについては変更し、このまま11日まで高知に留まって鍛えることも決めた。難しい時間を過ごしたが、クラブ一丸となって素早い決断と実行力で難局を乗り切ろうとしている。

 10日間の休止期間に、何もできなかったわけではない。隔離中の選手たちとリモートでコミュニケーションを取ったり、分析チームがさまざまな映像を日々、準備して選手に提供するなど、頭の中の整理を進めた。選手もSNSで日々の様子を思い思いに綴るなど、ファン・サポーターの心配を和らげるように努めた。

「一人ひとりが、置かれている環境の中でできる限りのことをやっていこうとしていました」

 今年からチームを預かる松橋監督にとっては難しい船出だ。だからといって、それを嘆くわけでもない。その動じない姿勢がこの監督の最大の強みかもしれない。改めて、シーズンのスタートのようだと話す。

「シーズン当初のような感じですよね。もともと予定していた進め方もいくつか変えていますが、選手の意識が非常に高くて嫌な顔ひとつしないで良い取り組みをしています」

 ボールが大好きな選手たちだから、なおさらだ。

 短くない時間のロスが気になりそうなものだが、そもそもそれを損失だととらえてすらいない。

「この期間を取り返すとは思っていません。できる限りの中でしっかり作っていこうということです。そこを足していこうとすると、過負荷になってしまって難しくなっていきます。与えられている時間の中で、どこまでコンディションを整えられるかにチャレンジしています」

 走る距離やスピード、心拍数などなど、多岐にわたるデータを共有しながらスタッフと話し合いを深め、自分たちの目で選手を観察した上でコミュニケーションを取って心身の状態を見極めていく。そのていねいなやり方までがウイルス禍で変わるわけではない。

 こうしたピンチへの向き合い方は、監督自身の人間力が支えていそうだ。トップチームの監督としては初めて迎えるシーズンで、自らに誓うことがある。

「選手たちに物事を伝える以上は、僕の中にしっかりした価値観や信念がなければいけません。そうでなければ、伝えようとしても伝わりきらないと思っているので。彼らに本当に思いを伝えて、私の考えや気持ちを理解してもらえるか、そのことをずっと続けなければいけないと思っています。そこはぶらさずにやれよ、と自分に言っています」

 揺るぎない信念。2022シーズンの新潟の大きなテーマになりそうだ。


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