上写真=中村俊輔は降格させてしまった横浜FCをJ1に戻すためにピッチに立つ(写真◎J.LEAGUE)
「カズさんがいないのは単純に寂しい」
底力に気づいたのは、頭にきたせいだった。
中村俊輔が44歳の年に新しいシーズンを迎える。「長くやることを目的にしてきたわけではない」と言うが、では、なぜなのか。
「40歳過ぎたときにベンチ外になったときには……、頭にきましたけどね。だから、まだやれると思ったんですよ。オレはもうダメだとは一切思わなかった。だから、一番はメンタルじゃないですかね」
怒りが扉を開いた。
もう一つは責任だろう。
「もう1回、J1に戻す。戻して定着できるチームにする。それが、一緒に戦って支えてくれた人にできること。そこだけですね」
降格の責任を重く感じている。それをさまざまな形で果たしていく2022シーズンは、カズがJFLの鈴鹿ポイントゲッターズに移籍して、チーム最年長になった。
「何歳でもちゃんとしてなきゃダメだよね」と年齢に縛られるつもりはないものの、カズの不在に感じることはたくさんある。
「カズさんがいないのは単純に寂しい。いつも先頭を走ってくれてたから。でも、カズさんの考えで行動されたのでね。チームにだけではなく、個人個人のメンタルに残したもののほうが大きいので、大事にしていきたい」
カズのプロフェッショナリズムを、「ごめん」の謝罪の言葉に感じ取ってきた。
「パスコントロールの練習で、ちょっとずれただけでごめんって謝るの。意識が高いからこそちょっとミスしただけで。そういうところだよね。単に先頭を走るというだけではない意識の高さ、練習のときの取り組みの熱量がすごく高いから、自分も意識してきた」
今度は自分が先頭に立って、伝えていく。
「いままで通りにプラスして、監督の考えるサッカーがいままでと違うから(今季から四方田修平監督が就任)、それをどう表現して、そこに自分のプレーをどう見せていくか。あとはやっぱりうまくいかなかったときの振る舞いに人間性が出るので、そこだと思います」
そんな新しいシーズンの相棒は、「10」ではなく「25」にした。プロのキャリアを始めたときの背番号。セルティックでも、ヨーロッパから戻ってきたときも、このナンバー。
「10番つけてベンチはダメでしょ。それに若い選手につけてほしいのもあったし、25も好きだから。初心に帰るというか、またつけさせてもらいました」