上写真=雄叫び! メンデス(右から2人目)が起死回生の同点ゴールで甲府に勝ち点1をもたらした(写真◎J.LEAGUE)
■2021年6月5日 明治安田生命J2リーグ第17節(@JITス/観衆5,756人)
甲府 2-2 新潟
得点:(甲)泉澤仁、メンデス
(新)谷口海斗2
「こういうことが起こるのがサッカー」
お互いに足が止まってボールが行きつ戻りつの展開になるのは、仕方がなかっただろう。気温27.3度と暑さの影響を受けた試合。体力の消耗が激しい終盤の時間を、パワープレーで押し込むか、パスでかいくぐるかという両者の戦い方の違いが出て、どちらにもゴールという実りはあったが、ドローに終わった。
先制したのはヴァンフォーレ甲府。21分にアルビレックス新潟の堀米悠斗がGK阿部航斗にバックパスしたボールがミスになって、泉澤仁の足元へ。飛び出す阿部の脇を左足で冷静に抜いて決めて、幸先の良いスタートを切った。
それでも、新潟は首位の余裕か、いつものように幾何学模様のようにボールを動かしていって、最終ラインの5人とその前の4人で作った甲府のコンパクトなブロックに穴を開けていく。35分、右サイドで細かくつなぎながら高宇洋がセンタリング、鈴木孝司がスルーして谷口海斗が蹴り込むという見事なコンビネーションで同点とした。
後半に入っても新潟ペースで進んで、56分には逆転に成功。今度はもう一つの自慢である激しいプレスが功を奏した。右サイドで藤原奏哉が相手をつぶすと、こぼれ球を高木善朗が拾って持ち込んで、中央へ。再び谷口がワンタッチで蹴り込んで、GK岡西宏祐の手を弾いてゴールに流し込んだ。
甲府はこの直後に三平和司を最前線に投入して、空気を変えた。三平が前線からしつこく相手を追い回すことでスイッチ役になり、止まりがちだった甲府の選手の足を動かしていく。ボールがつながるようになると、今度は79分に3人一気に交代させて、フレッシュな攻撃的な選手で押し込んでいった。
前への圧力を高めるプレーを愚直に続けた結果、10分後に実った。89分、ロングスローがクリアされたが拾って左に展開、オーバーラップした荒木翔が折り返すと、新潟DFがクリアしきれず混戦になり、最後はメンデスが蹴り込んだのだ。押せ押せムードになった甲府が土壇場で追いついて、首位から勝ち点を奪ってみせた。
甲府の伊藤彰監督にとっては、追いついたことへの評価と、勝ち点2を逃したことの悔恨が相半ばする。「新潟に追いついたのは良かったです。ただ、言葉は難しいけれど、モヤモヤ感が残るゲームです」。5位のチームとしては首位に勝って差を詰められるチャンスと臨んだゲームで、先制もしながら勝ち点1をなんとか手にするという試合となり、「追いついてよかった、で終わらせてはいけない」と引き締める思いも明かした。
勝利を目前で逃した新潟のアルベルト監督は、落胆の色は隠せず「逆転したあと、ゴールに直線的に向かってくる攻撃に対して守備を固められず同点ゴールを決められたのは残念です」としたものの、「こういうことが起こるのがサッカーです」とも。「今日は守備で苦しみましたが、いずれにせよ自分たちのスタイルを信じていますし、日本サッカーにも適していると思うので、貫き続けていきたい」と改めて進むべき道を強調した。
写真◎J.LEAGUE