上写真＝吉尾海夏の2アシストが勝負を決めた。新潟に初めて土をつけたが、「まだまだ上を」と貪欲だ（写真◎J.LEAGUE）
■2021年5月16日 明治安田生命J2リーグ第14節（＠Gスタ/観衆3,430人）
町田 2-1 新潟
得点：（町）三鬼海、太田修介
（新）堀米悠斗
「クロスのときにマイナスが空くと」
最大の武器はその鋭い左足。だが、無敗で首位のアルビレックス新潟に今季初めての土をつけたのは、その右足だった。
FC町田ゼルビアの右サイドハーフ、吉尾海夏は開始からわずか36秒で決めた三鬼海のゴールを見事に演出した。奥山政幸が右サイド深くに入り込んだときにその内側のレーンに潜り込んでパスを引き出し、利き足と逆の右足でマイナス方向に戻すと、三鬼がきれいな弾道のミドルシュートを決めた。
11分にも右足が光る。奥山の縦パスで右サイドを抜け、柔らかい浮き球のパスをまたもや右足で送った。中央に入ってきた太田修介が右足で合わせ、相手DFに当たってコースが変わる幸運もあって、追加点になった。
「試合前の相手のスカウティングでもクロスのときにマイナスが空くと言われていましたし、自分がボールを持ったときに左足が警戒されているなと感じたので、そこは冷静に縦にいって右足でクロスを選びました。2点ともあまり中がしっかり見えていなかったけど、いいところに入ってきてくれて感謝したいと思います」
新潟の守備の「癖」を見抜きつつ、左足をおとりに使って右足を振る。作戦がきれいにはまった。
もう一つ、成功したのが、左右のサイドバックを入れ替えたことだ。右サイドの吉尾にとって、この日の相棒が奥山に代わった。
「すごく心強かったですし、後ろにマサくんがいてくれたので、自分が思い切って守備でも攻撃でも前から積極的に行けたことがすごく良かったと思いますし、相手のストロングをうまく2人で消せたのではないかと思います」
新潟のドリブラー、本間至恩を抑えるためにランコ・ポポヴィッチ監督がたどり着いた答えが、左右入れ替えという大胆な策だった。それが守備だけではなく攻撃でも効果を発揮して、1点目も2点目も「奥山-吉尾ライン」で奪ってみせた。
「首位で、まだ今シーズン負けていない相手に対して、自分たちのサッカーをして勝てたことはすごくうれしいです。でも、まだまだシーズンは続いていきます。もっともっと自分たちの順位を上げていけるように、ここで満足せずに上を目指してやっていきたいなと思います」
町田はこの勝利で6位。首位の新潟、2位のFC琉球とは勝ち点9差。まだまだ、これからである。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE
